「安さ頼み」に限界? 焼肉店の倒産が過去最多ペース:帝国データバンク調べ
焼肉店の倒産が急増している。帝国データバンクの調査によると、1〜8月の倒産件数は32件。2024年(56件)に並ぶ過去最多ペースで推移している。
焼肉店の倒産が急増している。帝国データバンクの調査によると、1〜8月の倒産件数は32件。2024年(56件)に並ぶ過去最多ペースで推移している。
「安い焼肉」が苦境、大手は新業態強化
倒産した32件のうち、負債1億円以上は9件(構成比28.1%)と過去最多となった。中心街の駅前など集客力が見込める立地であっても、競合の大手チェーンや新規参入店舗との競争が激化。積極的な出店や設備投資に伴う借入が重荷となり、収益が安定せずに経営破綻に追い込まれるケースが相次いでいる。
輸入牛肉や野菜など主要食材の価格上昇も深刻だ。特に輸入牛肉では、ロイン、かた、ばらといった人気部位の平均原価が2020年比で7割超上昇。焼き野菜やサラダに用いる野菜価格も高止まりし、同社が試算した「焼肉物価」は2020年比で約3割上昇している。
一方、焼肉メニューの価格上昇は1割程度にとどまり、コスト上昇を十分に転嫁できていない。特に、リーズナブルな価格を武器としてきた店舗では、値上げによる客離れと値上げできない場合の収益悪化というジレンマに直面。結果として、中小規模の事業者を中心に淘汰が進んでいる。
大手チェーン各社は価格改定に加え、牛肉以外の食材を活用した新業態を強化する動きが広がっている。ただし、電気・ガス料金や人件費など運営コストの上昇は続いており、競争環境は依然として厳しくなっている。
焼肉店の倒産は、物価高と人件費上昇に加え、借入返済の本格化を背景に今後も高水準で推移する見通しだ。帝国データバンクは「特に価格転嫁が難しい中小規模事業者で淘汰が続く」と分析している。
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