顧客データ取得は今の時代に合っていない 自販機アプリ「ジハンピ」が1000万DLされるワケ(1/3 ページ)
サントリーの自販機用キャッシュレスアプリ「ジハンピ」が、8月末時点で1000万ダウンロードを突破した。当初目標の2倍となる急拡大を達成した背景とは?
サントリービバレッジソリューション(東京都新宿区)が2025年3月から展開する自販機キャッシュレスアプリ「ジハンピ」が、8月末時点で1000万ダウンロードに達した。2025年の目標だった500万ダウンロードを大きく上回る結果だ。導入自販機の売り上げは、非対応の自販機に比べ平均3%以上伸びているという。
ジハンピは、自販機に設置された端末にスマートフォンをタッチするだけで商品を買えるアプリだ。利用登録に名前や年齢、メールアドレスといった個人情報が不要で、SMS認証と決済手段の登録だけでダウンロード直後から利用できるのが特徴だ。クレジットカード全般の他、「PayPay」や「d払い」といった電子決済サービスなど合わせて13種類の決済手段を登録できる。また、楽天ポイントなど5種類のポイントサービスの連携も可能だ。
ジハンピ対応自販機は9月9日時点で17万台以上に拡大。本格展開を始めた3月から、ジハンピアプリをダウンロードすると、ジハンピ対応自販機の商品の中から、好きな飲料が3本無料になるキャンペーンも実施している。
ジハンピ開発の背景にあった2つの課題とは
同社がジハンピを開発したのは、自販機のキャッシュレス普及を阻んできた2つの課題に対応するためだった。サントリーの自販機は全国に約35万台あるが、ジハンピ導入前にキャッシュレスに対応していたのは全体の2割程度にとどまっていた。
キャッシュレス化を阻む第1の課題は、「キャッシュレス端末の導入コストの高さ」である。これまでは他社製の端末を自販機に設置していたが、導入や運用にかかる費用が高額で、収益性の高い一部の自販機にしか展開できなかった。ジハンピの開発を担当したマーケティング本部の井上尊之副部長は、「都心ではキャッシュレス対応の自販機も多いが、郊外や地方ではほとんど見かけない。社会全体でキャッシュレス化が進む中、自販機が対応できていないのは問題だと思った」という。
第2の課題は「操作の複雑さ」だ。キャッシュレス決済の端末には、さまざまなメーカーのものがあり、メーカーごとに操作方法が異なるため、使い方が分からず購入を諦めてしまう利用客も多かったという。ジハンピの開発初期に普段自販機を使わない人を集めて行った実証実験では3分の1が操作方法が分からず、問題の深刻さが浮き彫りになった。井上氏は「お客さま目線のキャッシュレス化ができていなかったことに気付き、ショックだった」と語る。
こうした課題に向き合うためには、「自分たちで作らなければ解決できない」と判断。3年をかけてジハンピを開発した。
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