面倒な「データ分析」をChatGPTで完結する方法【簡単に使えるプロンプト紹介】(2/2 ページ)
日次の売り上げデータを分析して、経営層へ報告する資料を作らなければならない……。そんなときは、ChatGPTにデータ分析を手伝わせることができます。
テンプレートのカスタマイズ方法
提示したプロンプトの中で「# 条件(固定部分)」の要素を調整すると、状況に応じた分析結果を得やすくなります。例えば、比較対象を「先週比」や「前年同期比」に変えたり、売り上げを地域ごとに分解して分析したい場合は「上位の地域別売り上げと伸び率を求めてほしい」と書くことで、具体的な視点を加えることができます。
施策アイデアの提案は、プロンプトの中に指示を書いておくと便利です。「改善策を3つ」「新規施策のアイデアを5つ」という形で具体的に数を示すと、ChatGPTが網羅的なアイデアを提示してくれます。要望があれば「箇条書きを中心に、簡単な説明文を添えてください」と追記しておくことで、見やすいアウトプットに仕上がります。
<ChatGPTの日本語グラフにおける文字化け対策>
ChatGPTで生成したグラフに日本語を使用する場合、デフォルト設定では文字化けが発生することがあります。特に商品名やラベルが「□□□」や不明瞭な文字になってしまうケースがあります。このような問題を解決するには、日本語対応のフリーフォントを活用するのが有効です。特におすすめなのが「Noto Sans JP」で、Google Fontsから無料で入手可能です(※)。
※参考:https://fonts.google.com/noto/specimen/Noto+Sans+JP
上記のサイトで「Get font」を押し、「Noto Sans Japanese」のダウンロードボタンを押します。保存されたZipを解凍すると、「static」フォルダー内に「.ttf」拡張子のフォントデータが入っています。いずれでも構いませんが、フォントの太さが中程度の「NotoSansJP-Medium.otf」を選んでChatGPTにアップロードするのがおすすめです。
利用方法は簡単で、フォントファイルをダウンロード後、ChatGPTのデータ入力欄でアップロードし、「日本語の表現にこのフォントを使用してください」と指示するだけです。これにより、折れ線グラフや棒グラフのタイトル、軸ラベルが正確かつ見やすく表示され、資料の品質向上につながります。無料で利用できる信頼性の高いフォントですので、ぜひ取り入れてみてください。
ケース1:トップ商品の洗い出し
日次や週次の会議で、最も売れている商品が何かを短時間で把握したいケースです。売り上げ金額や個数の多い順で上位だけを抽出したい場合に役立ちます。
【プロンプト例:トップ商品の洗い出し】
以下の要件に沿って売上データの分析を行ってください。
# 条件(固定部分)
- 商品ごとの売上合計を算出し、トップ3商品を抽出してください
- それぞれの売上額と全体に占める割合を教えてください
- 簡単なサマリーを文末でまとめてください
# 分析対象データ(可変部分)
{{ExcelやCSVファイルをアップロードするか、表をコピペする}}
実行すると、商品名ごとの売り上げ金額が一覧化され、最も売り上げが大きい順に3つだけ取り出して表示してくれます。
例えば「1位:商品A 50万円(全体の25%)」「2位:商品B 35万円(全体の17%)」といった形式になることが多いです。最後に「これらの3商品で全体の半分近い売り上げを占めるため、今後の仕入れ強化が有効かもしれません」などの短いサマリーが自動的に付与される場合があります。そのまま会議に持ち込んで共有しやすい形です。
ケース2:データに基づくグラフの作成
売り上げデータをただ眺めるのではなく、折れ線グラフや棒グラフを用いて一目で把握したい場合に有効です。ChatGPTのデータ分析機能を使えば、「グラフを作って」と依頼するだけで自動的に可視化してくれます。短時間で資料に載せるグラフを作成できるため、ミーティング資料や社内共有資料を迅速に整備できます。
【プロンプト例:データに基づくグラフの作成】
以下の要件に沿って売上データを分析・可視化してください。
# 条件(固定部分)
- 貼り付けた売上データを読み込み、売上推移を折れ線グラフで表示してください
- 可能であれば、商品別に色分けして比較できるようにしてください
- グラフのタイトルや軸ラベルもわかりやすく設定してください
- 最後に、データからわかるひと言コメントをつけてください
# 分析対象データ(可変部分)
{{ExcelやCSVファイルをアップロードするか、表をコピペする}}
上記のプロンプトと売り上げデータを入力するだけで、ChatGPTが自動的にグラフを描画して画面上に表示してくれます。日付と売上高を軸にした折れ線グラフが完成し、商品別の推移なども色分けされ、視覚的に分かりやすくなります。さらに「平日に売り上げが低く、週末に高くなる傾向があります」「商品のBとCは同じタイミングで売り上げが上昇しています」といった短いインサイトコメントが併記されるため、社内への共有に役立ちます。
ケース3:インサイト(示唆)をまとめたレポート作成
経営層や上司へ提出する資料では、数字の一覧やグラフだけでなく、「今何が起きているか」「どのような施策を取るべきか」といったインサイトが重要視される場合が多いです。大量の売り上げデータを貼り付けた上で、ChatGPTに要点と考察を書かせれば、担当者がゼロから文章を作る手間を大幅に減らすことができます。さらに、上層部に向けて戦略的な提案を盛り込むときや、原因分析を丁寧に示したいときにも、レポート形式のアウトプットは有効です。
【プロンプト例:インサイト(示唆)をまとめたレポート作成】
以下の要件に沿って売上データを分析し、レポートを作成してください。
# 条件(固定部分)
- 月次の売上データをもとに、特に前年比で伸びている商品やチャネルを例示してください
- 伸び率が高い要因、想定される背景、今後のリスクやチャンスなどを考察してください
- 最終的に、改善策や新規施策の提案を5つ挙げてください
- レポートは敬体(です・ます調)でまとめ、短い段落に分けて書いてください
# 分析対象データ(可変部分)
{{ExcelやCSVファイルをアップロードするか、表をコピペする}}
貼り付けた売り上げデータを読み取り、ChatGPTが前年比を自動的に計算。「商品Aが前年同月比110%となっている理由として、直近で行ったキャンペーン効果が大きい可能性があります」などの考察を記述することがあります。背景としては、競合との比較や時期的なイベントなども推測される場合があるため、社内の実情に照らし合わせて精査するとより正確な分析につながります。
また、想定されるリスクやチャンスが文章に含まれ、「商品Bが伸び悩んでいるのは主力顧客層が他社ブランドに流れた可能性があるためです。来月は新規の販促施策を実施する必要があります」といった指摘が出るケースもあります。最後に「SNSキャンペーンの強化」「既存顧客への追加フォロー施策」「全国店舗へのマニュアル再徹底」などの具体的な改善策やアイデアがまとめられ、それぞれが簡潔な解説つきで提示されることが多いです。
筆者プロフィール:たてばやし淳
1986年生まれ、横浜育ち。オンライン動画でITスキルを教える人気講師。「多くの人に、仕事を自動化してラクにする方法を伝えたい」という想いから、Excelやマクロ、AI関連の書籍を執筆するなど発信活動を行う。YouTube総再生回数1300万回、チャンネル登録者数11万人超。また、オンライン動画教育プラットフォーム「Udemy」では22万人以上の受講者へ動画コースを展開している。
著書に『Excel×ChatGPTでビジネスが加速する! AI仕事術』(エクセル兄さん出版)、『学習と業務が加速する ChatGPTと学ぶExcel VBA&マクロ』(ソシム)、『Excel×Copilot AI仕事術』(日経BP)、『エクセル兄さんが教える世界一わかりやすいMOS教室』(PHP研究所)などがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Geminiを業務で使いこなす! Google Cloudが指南する「プロンプト入力」4つのポイントは?
GoogleのAI「Gemini」を業務で使いこなすには──? Google Cloudの担当者がレクチャーした。
「プログラミング言語」は今後不要になるのか ソフトウェア開発者の業務、半分はAIで自動化可能に
言語生成AIが持つプログラミングコードの生成能力は驚異的なものです。ソフトウェア開発における生成AIの導入は、3つの形態に分けられます。
野村が捨てた「資産3億円未満」を狙え SMBC×SBIが狙う“新興富裕層”の正体
SMBC×SBIが、「Olive Infinite(オリーブ インフィニット)」というデジタル富裕層向けサービスを開始した。野村證券をはじめとする大手証券会社が切った「1億〜3億円層」に商機があるという。
DXの“押し付け”がハラスメントに!? クレディセゾンのデジタル人材育成を成功に導いた「三層構造」とは
昨今は人材獲得に苦戦する企業が多く、文系人材をリスキリングなどで育成し、デジタル人材に育てようとする動きが活発化しているが、クレディセゾンのCDOは「『トランスフォーメーションハラスメント』には要注意だ」と警鐘を鳴らす。「トランスフォーメーションハラスメント」とはどんなものなのか。DX時代の人材育成の本質とは何か。