新型プレリュードは若者に売れない？ それでも日本車の未来を切り開く理由：高根英幸 「クルマのミライ」（2/5 ページ）

ホンダの新型プレリュードが発売された。先代とは異なり、若者ではなく中高年層向けのクルマで、上質な走りと特別感のある仕立てが際立つ。このような新しい価値観を与えてくれるクルマこそ、日本車のブランド力向上につながるだろう。

[高根英幸，ITmedia]

若者が「買えない」ではなく「買わない」クルマ

　3ドアのスポーティーなクーペであれば、若者向きのクルマと捉えられがちだが、クルマを所有しているZ世代のユーザーにとって、新型プレリュードは「買えない」ではなく「買わない」クルマにカテゴライズされる。

　それはなぜか。そもそも自分の年収を超えるような価格帯のクルマは選択肢に入らず、クルマ以外の趣味にも自分で稼いだお金を使いたいからだ。若者が楽しめるクルマの選択肢は他にもたくさんある。

若者が選ぶスポーツカーには、トヨタのGR86やスバルBRZ、マツダ・ロードスターがある。新型プレリュードは価格が2倍前後である上に、上質さを追求した1グレードで、純粋に走りを楽しむドライバーや、改造を楽しむクルマ好きのためのモデルではないのだ（写真：meiju0919）

　筆者は、新型プレリュードはかつてプレリュードに乗っていたドライバーではなく、CR-Xに乗っていた人にこそ試してもらいたいと思う。若者ではなく、どちらかといえば熟年層や高齢ドライバー向けのクルマなのだ。

　高齢ドライバーは運転せず、免許を返納すべきだ、という考えもあるが（筆者は運転免許の定年制を導入するなら再取得も認めるべきでは、と思う）、こうした熟年層にとって魅力的なクルマが今後登場してくると、日本経済の活性化につながる可能性が出てくる。

　しかもこれは、縮小していく日本の自動車市場だけを視野に入れた話ではない。欧米でも2ドアクーペは、パーソナルな移動のためのモビリティとして根強い人気がある。

　アジア諸国でも、これからは大き過ぎず高級感があって、運転することが楽しい富裕層向けのクーぺを選ぶユーザーが増える可能性が高い。クルマに趣味性を求めるユーザーが増え、こうした優雅なクルマが選ばれるのは、市場が成熟してきた証なのだ。