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RIZINが名古屋IGアリーナで「1万7000人」興行 榊原代表に聞く協業拡大の狙い(2/2 ページ)

名古屋市IGアリーナで開催される格闘技イベント「RIZIN.51」。IGアリーナは収容人数1万7000人で、地方開催としては異例の大規模開催となる。地方開催の意義について、榊原信行代表と広報担当の横島加奈さんにインタビューした。

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PPV10万超と登録137万人 国内主要スポーツ規模を示す根拠

 RIZINのスポンサー戦略は、単なる興行の支援を超えた企業同士の協業へと発展している。今回の名古屋大会では、ジェリービーンズグループが権利を持つ韓国発の人気アイスクリームを会場で販売するなど、新しいカルチャーの発信拠点としての役割も担う。榊原代表は「RIZINは興行だけでなく企業とのコラボレーションの場としても機能します。イベントを単なる格闘技の枠にとどめず、企業のブランドや新しいカルチャーを広める場にしていきたい」と展望を語る。

 こうしたスポンサー企業にとってRIZINとの協業は、IR効果と社会的発信力の両面でメリットがある。「RIZINと組むことによってスポンサー企業もIR効果を得られますし、RIZINとコラボするほどのブランドだという社会的発信力にもつながります」と榊原代表は説明した。

 RIZINの影響力を示す具体的な数字として、有料課金視聴者数を現すPPV(ペイ・パー・ビュー)は近年、各大会の平均で10万件を超え、YouTube登録者数は137万人に達している。この規模感について榊原代表は、他のスポーツコンテンツとの比較で説明する。

 「今年大旋風を巻き起こした阪神タイガースの公式チャンネルでさえ、およそ60万人弱なんです。それに対して、RIZINは137万人ですから、どれだけ多くの人たちに支持されているかが分かると思います」

 国内スポーツ団体のトップであるパ・リーグTVの登録者は156万人ではあるものの、これは6球団を束ねたチャンネルだ。Jリーグや読売ジャイアンツ、新日本プロレスを上回る登録者を擁するRIZINは「日本を代表するスポーツコンテンツの一つであることを示している」と自信を見せた。

 選手個人の発信力の強さも、相乗効果を生んでいる。RIZINにも出場する格闘家の朝倉未来選手個人のYouTubeチャンネルは、約350万人の登録者を抱えている。「RIZINの137万人に加えて、選手たち自身がYouTubeやSNSで積極的に発信していることで、相乗効果として知名度が大きく拡大しています」と榊原代表は話す。

 実際に地方を訪れると、想像以上の認知度の高さを実感するという。子どもたちも榊原代表を見ると「あ、YouTubeに出ている人だ」とすぐに認識する。「これからもファンの皆さんが熱狂できるものを提供し続けなければならないと、あらためて思いますね」と責任を感じるようだ。

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「ABEMA」(アベマ)はRIZIN.51を、「ABEMA PPV(アベマ ペイパービュー)」で全試合生中継。本大会のオープニングファイト4試合と第2試合までを無料放送する

10周年施策で新規層が流入 スタンプラリー起点の子ども・女性ファン拡大

 RIZIN10周年を機に実施しているスタンプラリー企画は、新たなファン層の開拓に効果を発揮している。会場での大会観戦で5ポイント、前夜祭や公開練習などの公式イベント参加で1ポイントを付与し、貯まったポイントに応じて特製Tシャツやパスケース、タオルなどの記念グッズと交換できる仕組みだ。

 榊原代表は、次代を担う子どものファン層拡大を実感していると話す。「圧倒的に子どもたちのファンが増えている実感があります。それだけではなく、競技人口そのものが拡大しているんです」と語る。実際に選手からは、大会翌週にジムへの新規入会者が増えるという報告も聞いているという。

 格闘技の参入障壁の低さについて榊原代表は「格闘技はサッカーや野球に比べて初期投資が少なく、2人いれば練習も成り立ちます。場所も取らないので、始めやすいんですね」と説明した。この特性が、世界的な競技人口拡大の要因だと分析している。

 名古屋大会では、地域文化との連携も重視している。YouTubeやXでは八丁味噌を象徴とした名古屋の食文化と、格闘技イベントを組み合わせた企画も展開予定だ。「名古屋の食文化を語ると、味噌カツや味噌おでん、味噌串カツも全て八丁味噌がベースになっています」と話す。特に真っ黒な味噌おでんや、おでん屋発祥の串カツなど、背景のある食文化と合わせた格闘技の発信について「とても意義深いこと」と、その意義を強調している。RIZINの地方大会では、グルメなど、その土地独自の文化を発信することで、地域への還元も狙う。

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RIZIN.51試合順

RIZINガールから広報へ 地方創生の最前線を担う新戦力

 RIZIN地方大会で、ご当地グルメなど地域の魅力を発信しているのが、総フォロワー10万人達成を目指して奮闘中の広報、横島加奈さんだ。横島さんは、RIZINを盛り上げる「RIZINガール」として2021年から2022年にかけて活動し、それまで12年間続けていたアイドル活動を休止。2024年8月にドリームファクトリーワールドワイドに広報として入社した。

 横島さんは、「全国的にもRIZINは有名なんだと実感しています。地方に行く先々で『来てくれてありがとう』というファンの方の声を聞くことができ、その度に本当に足を運んでよかったなと思いますね」と、地方ファンとの交流を振り返る。今回の名古屋の合同公開練習イベントでも多くの参加者から声を掛けられ、横島さんの写真入りのカードを配っていた。途中で枚数が足りなくなり、全ての人には渡せていなかったほどだ。

 広報に転身したきっかけも、RIZINの社会貢献に対する考え方が決め手だったという。

 「RIZINの興行に帯同し、地方で極上のエンターテインメントを展開する様子を見て、私もこの世界に携わりたいと思ったことがきっかけでした。今ではRIZINの一員として、日本全国を盛り上げていきたいと日々、頑張っています」(横島さん)

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広報の横島加奈さん(左)と榊原信行代表

 横島さんは名古屋大会でもYouTubeやXなどで、地域を代表するご当地グルメとして、味噌煮込みうどんの店舗をPRもする。選手いきつけのお店を訪ねてRIZINのポスターを貼ってもらうなどして宣伝することで、他の地方からの来訪者の回遊性向上にも一役買っている。6月に札幌市で開催した「RIZIN LANDMARK 11 in SAPPORO」の前にも多くの飲食店を訪れたり、街中でポスターを配ったりして大会をアピールしていた。その様子をYouTubeで発信することによって、視聴者の熱量向上も狙うのである。

 実は、地方興行におけるこうした食のPRは、アイドルのコンサートや音楽ライブでは常套手段だ。公演前にSNSなどでオススメの店を名指しで紹介したり、公演中に演者がご当地グルメに直接触れたりすることもある。

 だが、公演中トークする場が限られる格闘技では、選手自ら食の情報を発信することが難しい。にもかかわらず、格闘技でも同様の施策を広報がわざわざ担っているあたり、RIZINの意義として地方創生を重視している点がうかがえる。

 筆者は最高のコンテンツを開催することこそが、地方創生の起爆剤になり得ると考える。井上尚弥選手の大会に続いて、RIZIN名古屋大会がどれだけ地域経済に貢献するか注目だ。

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オンラインクレーンゲーム「クレーンゲームマスター」「ゲットライブ」「アイキャッチオンライン」でRIZINオリジナルの新景品リリース(画像は広報・横島加奈さんのアクリルスタンド。プレスリリースより)

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