RIZINが名古屋IGアリーナで「1万7000人」興行 榊原代表に聞く協業拡大の狙い(1/2 ページ)
名古屋市IGアリーナで開催される格闘技イベント「RIZIN.51」。IGアリーナは収容人数1万7000人で、地方開催としては異例の大規模開催となる。地方開催の意義について、榊原信行代表と広報担当の横島加奈さんにインタビューした。
格闘技イベント「RIZIN」を運営するドリームファクトリーワールドワイド(東京都港区)は9月28日、名古屋市で「RIZIN.51」を開催する。同社が近年注力する地方興行開催の一環で、7月に北区・名城公園に完成したばかりの「IGアリーナ」で開く。IGアリーナは収容人数1万7000人で、地方開催としては異例の大規模開催となる。
名古屋大会に合わせた物販や、公開練習や前夜祭といったイベントを実施し、特に地域外からの来場者に対して市内回遊と滞在型消費を生む施策も積極的に実施しているのが特徴だ。
RIZINの榊原信行代表は愛知県出身。地元開催ということもあり、思い入れも強いようだ。地方開催の意義について、榊原代表と広報担当の横島加奈さんにインタビューした。
榊原信行(さかきばら のぶゆき)RIZIN FIGHTING FEDERATION CEO、株式会社ドリームファクトリーワールドワイド代表取締役社長。大学卒業後、東海テレビ事業株式会社に入社。「K-1 LEGEND 〜乱〜」や「UWFインターナショナル名古屋大会」などのイベントをプロデュースする。1997年には「PRIDE.1」を開催し、成功に導く。2003年にはPRIDEを運営するDSEの代表取締役に就任。2007年に売却するまで、「PRIDE」の躍進に大きく貢献する。2008年には「FC琉球」のオーナーとなり自ら経営に携わり、2009〜2013年にかけてはJFL(日本フットボールリーグ)の理事にも就任。2015年に自ら実行委員長として「RIZIN FIGHTING FEDERATION」を立ち上げる。近著に『負ける勇気を持って勝ちに行け! 雷神の言霊』(KADOKAWA)
名古屋で実現した大規模開催 地域振興の意味は?
RIZIN名古屋大会であるRIZIN.51は、収容人数1万7000人のIGアリーナという大規模会場での開催となる。この背景には、バスケットボールのBリーグの普及によって新しいアリーナ施設が全国各地に作られていることがある(関連記事【Bリーグ普及が生んだ「RIZIN」の地方進出 榊原CEOに聞く札幌大会開催の意義】)。
9月14日には同アリーナで「NTTドコモ Presents Lemino BOXING トリプル世界タイトルマッチ 井上尚弥 vs ムロジョン・アフマダリエフ」も開催された。海外を除けば首都圏以外で初の井上尚弥の世界戦だったこともあり、チケットの一般販売はわずか10分で完売したという。アリーナ建設ラッシュは、確実に地方に経済的な恩恵を与えている。
7月に完成したばかりの「IGアリーナ」。9月14日に「NTTドコモ Presents Lemino BOXING トリプル世界タイトルマッチ 井上尚弥 vs ムロジョン・アフマダリエフ」が開催された同会場で「RIZIN.51」も開催される
RIZINについていえば、これまで名古屋大会の会場は日本ガイシホールやドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催することが多く、この会場の定員は6000〜8000人規模だった。一方のIGアリーナは7月にできたばかりの新会場というだけでなく、キャパシティが一気に拡大した形になる。
榊原代表は当初、名古屋でこれほどの規模の会場が満員になるかどうか不安もあったという。「正直言って、IGアリーナが満員になるのかどうか不安もありました。ただ、せっかくこの規模の新しい施設ができたのだから、挑戦しない手はないと思ったんです。自分のふるさとでもありますし」と振り返る。
だが、実際にチケット販売が始まると反応は上々で、既に追加席の発売に踏み切っているという。ステージサイド席という新たな席を設定して販売しており、榊原代表は「今のペースでいけば完売は必至だと思います」と手応えを語る。
RIZINの地方開催については、単なる興行の拡大を超えた意義を見いだしている。「RIZINというコンテンツのコンセプトはもともと『日本発世界へ』。つまりRIZINは、日本と世界がつながる舞台であると同時に、日本の地方を盛り上げていくものだと考えています。現RIZINフェザー級王者で、すでにキルギスでは国民的英雄となったラジャブアリ・シェイドゥラエフ選手の試合を名古屋で見られることは、本当に稀有なことですし、それこそが地方創生につながるのではないでしょうか」と胸を張る。
地元・名古屋での開催には特別な思い入れもあるようだ。東海テレビが入る「テレピア」という建物周辺には、榊原代表が東海テレビ事業の社員だった時代の記憶が詰まっており、「すごく懐かしい気持ちになります。私が23歳の当時は、毎日のようにここに通っていました。今でもRIZINのイベントでこの近くに来ると若い頃の記憶が鮮明に蘇ります」と故郷への愛着を話した。
名古屋大会で広がる協業 ジェリービーンズと361°の参画
名古屋大会では、メディア展開とスポンサー戦略の両面で新たな取り組みをしている。放送面では、榊原代表の東海テレビ事業社員時代の経験を生かし、独立系放送局との連携も強化した。
特に三重テレビとは長年にわたって良好な関係を築いており、今回の名古屋大会も地上波で放送する。さらに兵庫のサンテレビジョン、テレビ埼玉、千葉テレビ、TOKYO MXといった独立系の放送局とアライアンスを組み、地方への発信体制を整えた。
一方で、スポーツ業界全体を見ると、配信プラットフォームの影響力が急速に拡大している。WORLD BASEBALL CLASSIC 2026(WBC)において、米Netflixが“150億円前後の”配信権料を支払ったのではないかと報じられたことは、記憶に新しい。榊原代表は「あの金額を今の地上波放送局が出せるのかといえば、現実的には難しいかもしれません」と配信時代の実情について話す。しかし同時に、経営戦略としては「RIZINのようなコンテンツを新しい層に広めていく、認知を広げていく役割を担うのはやはり地上波。無料で届けることで潜在的なファンを呼び込む力は大きく、それを軽視してはいけない」と地上波で放送することの意義を強調した。
スポンサー面では、アパレル事業などを展開する東証グロース上場のジェリービーンズグループ(東京都台東区)との協業を、名古屋大会から本格化させている。スポーツとファッションを融合した新しいブランド体験の創出を目的に、戦略的パートナーシップを締結した。RIZINが持つ熱量の高いファンコミュニティと、ジェリービーンズグループの持つトレンド発信力・デザイン力を組み合わせることで、これまでにない顧客体験の提供を目指すという。
同社に加え、中国の大手スポーツシューズメーカー「361°」とも新たにスポンサー契約を締結した。361°は日本での知名度はまだ低いものの、中国やアジア全域では非常に有名で、バスケットのNBAスター選手を起用したCMも展開しているという。2026年に名古屋で開かれる2026年アジア競技大会でもオフィシャルスポンサーとして参加予定で、榊原代表は「一気に日本でも名前が広がっていくでしょう」と展望を語った。
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