マクドナルドと吉野家、「おまけ商法」でなぜ差が付いた? 転売ヤー対策に見る両社の違い(4/4 ページ)
マクドナルドのハッピーセットで、ポケモンカードに多くの転売ヤーが群がり騒動を呼んだ。一方、同時期には同じく吉野家の「おまけ」商法が称賛を浴びていた。両社の違いはなぜ生まれたのか。
Nintendo Switch2は「価格差」も使った
転売ヤー問題では、Nintendo Switch2も注目を集めた。任天堂は6月に2種類のNintendo Switch2を発売した。日本語版の4万9980円に対し、海外利用を想定した多言語対応版は6万9980円だ。安い方を日本語限定にすることで、海外への転売を防ぐ狙いがあったとみられる。
同社はすぐに供給するのではなく、抽選販売などで少しずつ供給する体制を採用した。公式ショップの「マイニンテンドーストア」では、「Nintendo Switchのプレイ時間が50時間以上であること」などを応募の条件の一つとしている。第4・5弾と抽選販売を継続している点も消費者に「いつか買える」と思わせることができ、高値での購入を踏みとどませる。
大手家電量販店も転売ヤー対策を実施している。ビックカメラやヨドバシカメラでは購入を提携クレジットカードの所有者に限定。本人確認書類の提示を求めた上で、過去に自社グループでNintendo Switch2を購入していないことなどを条件にした。
購入制限だけでは不十分だ
単なる購入回数の制限は転売ヤー対策として効果を発揮しない。高価で売れると転売ヤーが判断すれば、何度でも並ぶからだ。本人確認書類や会員IDで制限しても、友人などを使って大量に仕入れようとする。国内のテーマパークでは、1人3点までなどの購入制限をかけているが、転売ヤーは1人で複数枚のチケットを用意し、大量に仕入れているという。高値で売れるなら入場料くらいは回収できてしまうわけだ。
転売ヤーの多くは専業のフリーランスや大学生とされる。時短で働く外国人などもおり、時間的な制約は少ない。とはいえ、吉野家のように待たせる対策は、一つの正解例となるかもしれない。売れるかどうか分からないまま待ち続けるのは大きなリスクだからだ。
その上で、転売による利益を生じさせない適正な価格設定も必要である。マクドナルドのように1枚300円弱でレアなカードを供給するのは、転売ヤーから見て異常に安いといえる。企業が「転売ヤー相手でも、売れれば良い」と思うなら別だが、消費者の不満の矛先が企業に向かっていることも認識しなければならない。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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