Jリーグが仕掛ける“行きたくなる体験” スタジアムに人が集まる秘密(3/8 ページ)
Jリーグは、スタジアムに“行きたくなる体験”を生み出す戦略で観客動員を拡大している。新スタジアムや注力試合、招待施策など、多角的な施策で満員スタジアムを実現する秘密に迫る。
「関心を耕す」マーケティング
これまでの観客動員数を振り返ると、一時的に落ち込んだ時期もあったが、全体としては成長を続けていた。しかし、リーグの調査によると「Jリーグに対する関心度」は、微減傾向から横ばいで推移していたという。コア層は定着していたが、新規層やライト層の来場は伸び悩んでいた。さらに、2020年からはコロナ禍の影響で入場者数が激減した。
転機となったのは、2022年3月にチェアマンに野々村芳和氏が就任したことだ。「1年でも早く2019年を超えよう」という目標を掲げ、マーケティング戦略の見直しに着手した。
その核となったのが、露出戦略の強化だ。後ほど詳しく紹介するが、各地域で地元クラブの存在感を高める活動に注力した。鈴木氏は「集客は獲得する行為だが、関心を高めるのは耕す行為」と語るが、この「耕す」活動が成長の基盤となった。
2023年シーズンは2019年比で99.7%と、目標には届かなかったが、翌年の大幅増につながる成果を築いた。その要因について、鈴木氏は「リーグとクラブが一体となり、新規・ライト層の獲得に注力できた」と分析する。来場数だけでなく関心度でも改善を示し、この関心度向上のタイミングと試合数の増加や新スタジアムの開業が重なったことで、相乗効果を生み出した。
具体的な戦略として、2021年度から導入した顧客起点マーケティングのフレームワーク「9segsR」による戦略的ターゲティングがある。5層の顧客ピラミッドに関心度の要素を追加し、スタジアム観戦回数や経験、Jリーグの認知度などを基準に9層に分類した。
2024年シーズンは、Jリーグを知っているが来場経験がない「認知・未利用層」を重点セグメントとして設定。年に1〜2回来場するライト層ファンへ転換することに注力した。
調査では高関心層が前年の16.7%から18.0%に、スタジアム観戦層も7.9%から9.3%に増加。特に関東以外の地域での関心度向上が顕著で、ローカル露出戦略の効果がデータでも裏付けられた。
重点ターゲットとした認知・未利用層の規模は横ばいで推移しており、新規の認知拡大と既存層からの転換が同時に進んでいることを示している。
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