「伝わる資料」の作り方 アイデアに詰まったときの打開策は?(3/3 ページ)
1人でプレゼン資料を作成していて、アイデアに詰まった経験を持つビジネスパーソンも少なくないだろう。そんなときの打開策を紹介する。
――スライド作成において、ご自身の失敗談もあれば教えてください
私にも黒歴史があります(笑)。パワーポイントにアニメーション音が付けられる機能があることに感動し、全てのスライドに音付きのアニメーションを入れたプレゼン資料を作成しました。しかし、それは上司が多くの人の前で話す用のプレゼン資料だったのです。結果はお察しの通り、大失敗でした。
見た目や演出にこだわるのは良いことですが、本質は「何を伝えるか」です。デザインやギミックは、あくまで伝えるための手段でしかありません。初心を忘れず、伝えるべき内容にフォーカスすることの大切さを学びました。
――アイデアに詰まったとき、どのように打破していますか?
自分ひとりでは視点が偏ることもあります。そういう時は、自分+2人、多くても3人でディスカッションします。大切なのは、時間と人数を限定すること。私は「30分で叩き台を作り、30分でディスカッション」というルールにしています。
ここで重要なのは、経験のある人を選ぶことです。知見がない人との会話は背景説明に時間がかかり、実質的な議論に入るまでが遠くなってしまいます。内容を理解しているメンバーであれば、直感的に「これは良い」「これは要らない」と判断でき、効率よくブラッシュアップが可能です。
――資料を複数人で分担して作成することについてはどう考えていますか?
基本的に、資料作成は1人で行う方が良いと考えています。複数人でページを分担すると、トーンや構成がバラバラになりやすく、一貫性が崩れます。
もちろん、膨大な資料で分担せざるを得ない場合は例外です。ただし、できるだけ1人が全体を統括して構成を整える方が、伝わりやすく完成度の高い資料になります。
――資料作成においてAIからの提案をどのように取り入れていますか?
私はChatGPTをよく使います。自分の構想を読み込ませると、それに沿った初期構成をAIが提案してくれます。写真素材の選定やアイデア出しにも役立ち、作業時間を30%以上削減できています。
ただし、AIはあくまで補助的な存在で、「誰に」「何を」「どう伝えたいか」という核の部分は人が担うべきです。最近ではPowerPoint、Googleスライド、Keynote、Canvaなど、どのツールにもAI機能が搭載されています。PowerPointのCopilot、Canvaのマジックデザインなどがその一例です。
直感的な操作で使えるものも多いので、まずは試してみることが大切です。
――AIの提案をそのまま使うことにはリスクはありますか?
AIに構成やアイデアを提案してもらうことは全く問題ないです。クライアントの情報を詳細に与えると、かなりレベルの高い提案が返ってくることもあります。
ただし、AIが出してきた提案は他の競合も同じように利用している可能性があるため、差別化が難しくなるリスクも考えられます。AIの案はあくまで選択肢の一つとして参考にし、自分の言葉で再構築するプロセスが必要です。
前田鎌利
1973年福井県生まれ。東京学芸大学卒業後、阪神・淡路の震災を機に 通信業界において17年にわたり従事。 2010年に孫正義社長(現会長)の後継者育成機関であるソフトバンク アカデミア第1期生に選考され年間第1位を獲得。 孫社長のプレゼン資料企画・作成・演出などを手掛ける。
ソフトバンクグループ会社の社外取締役や、ソフトバンク社内認定講師としても活躍。2013年12月にソフトバンクを退社、独立。ソフトバンク、ベネッセコーポレーション、セブンイレブン、マクドナルド、松竹、Jリーグなど年間200社を超える企業にて 講演・研修・コンサルティングを行う。
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