元ドラフト1位投手、28歳で戦力外、そして回転寿司屋へ――異色キャリアの裏にあった決断(1/3 ページ)
プロ野球の夢を断たれた28歳の男が、次に選んだのはすし屋だった。「明日から来い」と言われ、皿洗いから再出発。元楽天ドラフト1位・森雄大が塩釜港で見つけた、働くことの意味とは。
著者プロフィール
伏見学(ふしみ まなぶ)
フリーランス記者。1979年生まれ。神奈川県出身。専門テーマは「地方創生」「働き方/生き方」。慶應義塾大学環境情報学部卒業、同大学院政策・メディア研究科修了。ニュースサイト「ITmedia」を経て、社会課題解決メディア「Renews」の立ち上げに参画。
JR塩釜駅(宮城県塩釜市)から徒歩5分ほどの場所にある回転寿司「塩釜港」本店。
訪れたのは平日の昼12時半を過ぎた頃で、店の入り口には20人近くの行列ができていた。この日は暑く、強烈な日差しが降り注いでいたが、客は辛抱強く並んでいる。ただし、どちらかというと、表情はにこやかだ。あと少しで寿司を口にできることへの高揚感なのかもしれない。
店のそばをうろうろしていると、「こんにちは」と声をかけられた。振り向くと、スーツ姿の長身の男性。2012年に東北楽天ゴールデンイーグルスのドラフト1位投手として華々しくプロ入りした森雄大さんである。森さんはプロ2年目に初勝利を挙げたものの、その後はけがなどに苦しみ、2022年に28歳で現役を引退。“第二の人生”として彼が選んだのは、塩釜港での挑戦だった。
それから3年。朝3時起きで市場に通い、店舗運営を学び、銀座店の立ち上げに奔走した森さんは、今や会社の中核を担う存在となっている。2025年4月にグループ企業になった水産加工会社ヤママサの広報部長も兼任する。
野球選手から寿司屋へ――異色のキャリアチェンジを果たした森さんが語る、挫折と成長、そして仕事への向き合い方とは。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
今は鮮魚を追う、元楽天投手・森雄大さんが見つけた新たな「生きがい」
プロ野球を去り、寿司屋に飛び込んだ元楽天ドラ1投手・森雄大。市場で魚を見極め、銀座で顧客をつかみ、再び本店へ。挫折と再挑戦を経て彼がたどり着いたのは、「人を信じ、人を見る力」だった。
元球団社長が「地方の回転すし屋」に……なぜ? 銀座、国会議事堂に打って出た塩釜港の勝算
行列の絶えない回転ずし店「塩釜港」が、銀座や国会議事堂などに次々と出店している。その背景にある思いとは……。
書類でよく見る「シヤチハタ不可」、シヤチハタ社長に「実際どう思ってますか?」と聞いたら意外すぎる答えが返ってきた
ハンコで国内トップメーカーのシヤチハタが、2025年に創業100周年を迎える。気になっていた質問をぶつけてみた。インタビュー後編。
「こんな過疎町に……?」住民9割反対から“道の駅日本一”に なめことロイズが起こした逆転劇
廃校跡地に建設された宮城県大崎市の「あ・ら・伊達な道の駅」。住民の大半が反対する中で始まった挑戦は、今や来場者数320万人超、全国1位の人気を誇る施設へと成長した。地方創生のモデルケースとなった逆転劇を追う。
宮古島“観光バブル”の代償──倍増した家賃、住めなくなる地元民……変わりゆく現実
観光客が急増し、経済効果に沸く宮古島。しかしその裏では、人手不足や住宅難、地価高騰といった深刻な問題が島を覆う。急成長の光と影に迫る現地ルポ。

