「ラブブ」トレンドは長くは続かない? ジレンマを抱える人気キャラが「失った価値」:廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(6/6 ページ)
一気に人気キャラの仲間入りを果たしたラブブだったが、そのトレンドはもしかしたら長くは続かないかもしれない……。なぜか?
ラブブはリキッド消費の一部
本稿はあくまでラブブの転売市場やプレミア価値を現象として受け止め、それ自体を否定することなく考察を進めてきたつもりではあるが、本来であれば子どもでも手に取れる価格帯のキャラクター商品が、数万円単位で取引される現状の方がむしろ異常なのだ。
きれいごとに聞こえるかもしれないが、トレンドや投資対象としてではなく、ラブブの造形そのものへの愛着やロイヤリティによって支持する消費者にとっては、プレミアが落ち着き、入手しやすくなることはむしろ歓迎すべき変化だろう。多くの人に届けるために増産(再販)したら、プレミア価値がなくなるから株価が下がるのは何とも皮肉な話である。
とはいえ、今ラブブを欲しがっている小学生が来年も同じ熱量で欲しがっているとは限らない。われわれのトレンドは「リキッド消費」と呼ばれるように、流動的で、関心の移り変わりが早い。もしラブブが簡単に手に入るようになれば、その瞬間に“欲望を支えていた希少性”が消え、消費者の興味もまた次の対象へと移る。来年、再来年の夏祭りでラブブの偽物が並んでいる光景を目にすることは、もうないかもしれない。結局のところ、私たちの“欲しい”という感情は「いま流行っている」という状態そのものを欲しているのだ。
著者紹介:廣瀬涼
1989年生まれ、静岡県出身。2019年、大学院博士課程在学中にニッセイ基礎研究所に研究員として入社。専門は現代消費文化論。「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上、彼らの消費欲求の源泉を研究。若者(Z世代)の消費文化についても講演や各種メディアで発表を行っている。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」、TBS「新・情報7daysニュースキャスター」などで製作協力。本人は生粋のディズニーオタク。瀬の「頁」は正しくは「刀に貝」。
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