世界16言語圏へ事業展開 音楽企業ビルボードの「300%成長モデル」とは?:130年企業・ビルボードの変革【前編】(2/2 ページ)
ビルボード各国の成功事例を通じて、飛躍的成長を支える収益化の仕掛けに迫る。
中国 テンセント連携と独自コンテンツで拡大
ビルボード・チャイナを統括するPenske Media Corporation(PMC)のヴァイス・プレジデントであるグージー・チマ氏は、世界5位の音楽市場規模(国際レコード産業連盟調べ、2024年 年次報告書)である中国での戦略について説明した。同氏は「ストリーミングによって全体の90%以上収益を得ている」と話す。
同社はIT企業・Tencent(テンセント)との連携により、競合他社との差別化を図っている。テンセントは中国のデジタルエコシステムにおいて音楽ストリーミング、ソーシャルメディア、ゲーミングで支配的地位を確立している。
モバイルファースト戦略の徹底により、紙媒体やWebサイトを運営せず、WeChatやWeibo、bilibili、QQ Music、rednoteなどの中国独自プラットフォームで事業を展開している。その結果、現在は約46万4000フォロワーと月間330万インプレッションを獲得している状況だ。
コンテンツ戦略について、同氏は「ビルボード・チャイナチームが作ったオリジナルコンテンツが80%、翻訳コンテンツが20%」と語り、自社制作能力を重視したビジネスモデルを構築している。
雑誌の表紙(カバーストーリー)をデジタル媒体に置き換えたデジタルカバーストーリー事業では、33のアーティストで12億のビューを獲得。収益化に成功した日本音楽の市場ポテンシャルも大きく、グローバル音楽市場でトップ3の地位を占めている。
フィリピンや中国において独自のコンテンツ戦略で成果を上げる中、韓国はK-POPの世界的成功で培ったノウハウを生かし、次世代ビジネスモデルを展開している。10月24日公開の「130年企業・ビルボードの変革 後編」では、アジア発の実践事例から音楽配信時代における持続的成長の実践手法に迫る。
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