リクルートで成績"ビリ"→トップ営業へ 明日の商談から実施できる「眼前可視化」の効果:前編(3/3 ページ)
従来の足で稼ぎ、トーク力やコミュニケーション能力で勝負する営業はもう"無理ゲー"化している。これまで多くの人が、このスタイルでの営業に限界を感じ、営業職を離れていった。顧客のことを深く理解し、信頼関係を築くための方法として注目を集めるのが「眼前可視化営業」である。
生成AI×議事録で商談のレベルを引き上げる
藤島氏: さらに、テクノロジーを活用することで眼前可視化の効果をもっと高められると感じています。
例えば、事前準備の段階でも変わりますよね。商談前にPerplexityなどのAIリサーチツールで顧客企業を調べて、「こんな課題があるのでは?」という仮説を立てておく。その仮説をベースに眼前可視化で確認していくと、より踏み込んだディスカッションができるんです。「貴社はこういう課題があると思うんですが、実際どうですか?」と。
菊池氏: それは有効ですね。仮説があると、ヒアリングの質が全然変わる。
藤島氏: 他にも、当社はデジタルセールスルーム(DSR)というツールを提供しているのですが、眼前可視化した議事録や提案内容をここに保存しておくと、お客さまが何回見たか興味度合いを追うことができます。
例えば、今日商談したお客さまが議事録を10回も見直していたら、かなり前向きに検討してくれているって分かりますよね。逆に1回も見ていなければ、優先度が低いのかもしれない。これを受注確度の判断や、次のアクションの指標にできるんです。
菊池氏: お客さまの温度感が数字で見えるわけですね。
AIで議事録作成はダメ?
藤島氏: 商談でたまったメモをChatGPTやClaudeなどの生成AIで分析すると、営業組織の資産になっていきますよね。大事なのは順番で、まず眼前可視化でお客さまと認識をそろえた質の高い議事録を作る。そのデータをAIで処理する──この順番が重要なんです。
菊池氏: その通りですね。最近AI議事録ツールが増えていますが、AIにいきなり議事録を作らせるのは違うと思うんです。
眼前可視化では、お客さまと一緒に「この言葉の定義は何ですか?」「これで認識合ってますか?」と確認しながら作るので、お客さまと完全に認識がそろったデータができる。質の低いデータを入れても、質の低い分析しか出てこない。眼前可視化で作った、質の高い議事録だからこそ、AIでの分析や提案作成に価値が生まれるんです。
前編の本記事では、眼前可視化の進め方や営業業務への影響について紹介した。次回中編では、眼前可視化を支える「ヒアリング能力」を伸ばすコツについて、話を聞く。
菊池明光
株式会社可視化代表取締役社長
1978年埼玉県。早大政経学部を卒業後、(株)リクルート入社。 13年間勤務し退社、ベンチャー2社を経て、2016年(株)可視化を創業。 超有名企業から中小企業まで「営業ノウハウ可視化」のコンサルティングを実施。著書は「とにかく可視化:仕事と会社を変えるノウハウ」新潮新書。2024年上半期_新書売上_ランキング4位。
藤島誓也 株式会社openpage代表取締役
2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。2024年にはキヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本提携を行い、国内大手企業のデジタルセールス戦略推進を支援している。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。
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