案件減らし売上2倍に アドビの最強インサイドセールス部隊は、いかに大口受注を勝ち取るのか:BDR強化(1/3 ページ)
アドビでは、約2年ほど前からBDRを強化している。明確に絞ったターゲット企業からの受注獲得に注力した結果、とあるチームでは≪案件数が半数以上に減少したにもかかわらず、受注金額が倍増≫した。インサイドセールスは「若手の登竜門」として新人が多く配置されるケースが多いが、同社のインサイドセールス組織は一味違うという。
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昨今アウトバウンド型(企業が接点のない顧客にアプローチする営業手法)のインサイドセールス「BDR」(Business Development Representative)への注目が高まっている。これまでのスタンダードであった、マーケティングが獲得したリードにアプローチするインバウンド型のSDR(Sales Development Representative)と比較して、BDRでは顧客単価が高いエンタープライズ企業をターゲットに、ありとあらゆる手法を駆使してゼロから商談機会を創出するのが特徴だ。
「Photoshop」などのクリエイティブツールを提供するアドビでは、約2年ほど前からBDRを強化している。明確に絞ったターゲット企業からの受注獲得に注力した結果、とあるチームでは案件数が半数以上に減少したにもかかわらず、受注金額が倍増したという。
「アドビのインサイドセールスは少数精鋭。ベテランぞろいで、プロフェッショナルがそろっている」――こう話すのは、アドビ DXインターナショナルマーケティング本部 ビジネスディベロップメントチーム マネジャーの松田愛さんだ。インサイドセールスは「若手の登竜門」として新人が多く配置されるケースが多いが、同社のインサイドセールス組織は一味違うという。
大手からの受注、どうやって獲得する? アドビ流の戦い方
同社の事業は(1)「Illustrator」「Photoshop」といった編集ソフトを提供する「Adobe Creative Cloud」、(2)PDFや電子サインなどを扱う「Adobe Document Cloud」、(3)MAツール「Adobe Marketo Engage」などを提供する「Adobe Experience Cloud」――の3つに分類されている。
松田さんは3つ目のAdobe Experience Cloudのチームに属しており、デジタルマーケティングを推進するツールを扱っている。商品導入の金額は数千万〜数億円と、導入のハードルがかなり高いことが特徴だ。
インサイドセールスチームでは、売り上げや従業員規模、契約金額から明確にターゲット企業をリストアップ。さまざまな手法でターゲット企業に深く入り込み、キーパーソンとなる役職者や経営層にアプローチしていく。ターゲット企業のグループ企業全体での契約を目指すケースも多い。
一企業に対し担当の営業パーソンを決めている。他企業ではSDRとBDRを組織として明確に分けているケースが多いが、同社では担当営業が両方に対応している。
「当社では、SDRとBDRのミックスのような形で、ターゲット企業の担当営業が責任をもって両方対応しています。企業に深く入り込んでいくためには、インバウンドで入ってくるお客さまの声も、アウトバウンドで取り組む内容もかなり連動していると考えています」
ターゲット企業以外からの問い合わせにももちろん対応しているが、商談金額が高いため顧客側が断るケースも多いという。
エンタープライズ企業をターゲットとするBDRでは、意思決定にかかわるキーパーソンとどうやってつながるかが重要となる。年単位でロードマップを作り、受注獲得までの作戦を練る。
同社ではインサイドセールスとフィールドセールス、エンジニアなどでチームを組んで動いている。ターゲット企業一社に対し、アドビ側のメンバーは10人ほど。
インサイドセールスではホワイトペーパーのダウンロードやセミナー参加などで得たリードに対してアプロ―チするほか、SNS経由でキーパーソンにコンタクトを取ったり、役員に継続して手紙を送ったり、関係構築に注力する。
とはいえ、エンタープライズ企業では意思決定にかかわる人数が多く、役員、経営層などのキーパーソンとつながるのはなかなか難しい。同社では具体的にどのような取り組みをしているのか。
「つながりのあるお客さまから紹介いただくか、書面でアプロ―チすることが多いですね。他には、ターゲット企業一社のためにセミナーを開催し、顧客データを収集するケースもあります」
「メールと電話だけではお客さまのニーズは高まらないのではないかという考えから、定期的なコミュニケーションの方法も工夫しています。同じ方に長期的にアプロ―チするケースが多いのですが、最近はお手紙にお花を添えて送付。また、当社のマーケティングチームの役員の名前でメールやお手紙を送付し、『会社対会社でつながっていきましょう』というメッセージを表現するなど、さまざま工夫しています」
インサイドセールスチームのKPIでは受注貢献度合いを重視している。売り上げのうち、インサイドセールスの貢献による金額はどれくらいか、という視点で評価する。
「BDRでは商談期間が長い案件が多く、1年以上かかるケースも珍しくありません。インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティングなど、各メンバーがいろいろな施策を講じて、温めて温めて受注に至るのです。そのため、インサイドセールスで売り上げを立てるということではなく、インサイドセールスが獲得したリードや、生み出したきっかけが受注に貢献しているのか――という視点が重要です」
「フィールドセールスが日々の案件に集中している一方、インサイドセールスの強みはカバレッジを広げられること。まだ契約のない部署やグループ会社とつながり、キーパーソンを見つけ、案件化に貢献していくのです」
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