案件減らし売上2倍に アドビの最強インサイドセールス部隊は、いかに大口受注を勝ち取るのか:BDR強化(3/3 ページ)
アドビでは、約2年ほど前からBDRを強化している。明確に絞ったターゲット企業からの受注獲得に注力した結果、とあるチームでは≪案件数が半数以上に減少したにもかかわらず、受注金額が倍増≫した。インサイドセールスは「若手の登竜門」として新人が多く配置されるケースが多いが、同社のインサイドセールス組織は一味違うという。
THE MODEL型の分業体制は崩壊……? 高まる「効率化」の必要性
BDRを強化して約2年が経過した今、ターゲットを絞っている分、受注件数は減少しているが、受注金額が大幅に増加しているという。「案件数は半分以下になっていますが、受注金額は2倍程度に増加。少数精鋭で、生産性を高めてこれたと感じています」
「生産性向上」は、今後インサイドセールスを語るうえでキーワードになるだろう。人的リソースも予算も限られている現代、効率よく売り上げを立てることは喫緊の課題だ。
「当社は今クロスセル(顧客が購入を検討しているものとは別の商品・サービスを提案すること)やアップセル(客単価を向上させる取り組み)を重視する戦略を取っています。既存顧客からのアップセルやクロスセルのほうが効率が良いとする動きが、グローバルでトレンドになっていると感じています」
「今後は、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスなどのくくりはなくなり、企業全体でターゲット企業からの受注、クロスセルやアップセルを獲得しようとする動きが加速するのではないでしょうか。これまでのTHE MODEL型の分業体制がじわじわ崩れてきている気がしています」
「若手の部署」ではなくプロフェッショナル集団に
まだまだ「インサイドセールスは新人が集まる部署」「フィールドセールス配属の前に営業力を磨く場」――というイメージが根強い。しかし、これまで見てきたように、アドビのインサイドセールスでは、アカウントプランニング力や仮説構築力など、豊富な経験に基づく高いスキルが求められる。
「当社のインサイドセールス組織の大きな特徴として、少数精鋭で、ベテランの経験者を採用していることがあります。求めるスキルは、自立し、自らPDCAを回して組織に貢献してくれる人材。実際にメンバーは大手ベンダーでフィールドセールスをしていた人、管理職経験者などプロフェッショナルがそろっています」
「インサイドセールスを『営業の登竜門』とするのではなく、インサイドセールスとして極めた結果、フィールドセールスよりも給与が高くできるキャリアも用意しています」
BDRは米国でトレンド化している一方、まだ日本での取り組み事例はそこまで多くない。ゼロから商談の機会を創出するのは一見、気が遠くなるような作業だが、工夫次第で売り上げを倍増させる最短ルートにもなり得るのだ。
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