中小企業の「賃上げ余力」限界か 最低時給の平均1205円に
最低賃金に関する企業の実態調査によると、従業員を採用するときの最も低い時給の全体平均は1205円だった。2024年9月の前回調査から38円上昇したものの、徐々に賃上げ余力が低下しているという声もある。
帝国データバンクが2025年9月に実施した「最低賃金に関する企業の実態調査」によると、従業員を採用する際の最も低い時給(以下、最低時給)の全体平均は1205円だった。
2024年9月の前回調査から38円上昇し、厚生労働省が発表した2025年度の最低賃金(以下、最低賃金)の全国加重平均1121円を、約84円上回った。
最低時給と最低賃金の差は縮小傾向
最低時給と最低賃金の差額は84円で、前回調査の112円よりも28円縮小した。企業は最低賃金の引き上げに合わせて賃上げを続けているが、「これ以上賃金を上げると経営が厳しくなる」(不動産、愛知県)といった声もあり、徐々に賃上げ余力が低下しているという。
業界別では不動産、サービス業が高水準
業界別では、「不動産」が1284円でトップ。「サービス」(1260円)、「建設」(1250円)など、5業界が全体平均を上回った。
特にサービス業では、「情報サービス」(1392円)や経営コンサルティングを含む「専門サービス」(1380円)、「広告関連」(1335円)で1300円を超え、全体を押し上げた。一方「旅館・ホテル」(1080円)や「飲食店」(1105円)は、2025年度の最低賃金を下回った。
2029年までに最低時給1500円達成は困難か
政府は2029年までに最低時給1500円以上を目指しているが、達成できるとみる企業は少ない。「既に1500円以上」と回答した企業は6.6%、「可能だと思う」は21.0%で、合わせても27.6%にとどまった。
業界別では、「建設」(35.4%)、「不動産」(33.9%)、「サービス」(33.0%)が比較的高く、「小売」は16.5%で唯一2割を下回った。小売業では「可能だと思わない」が52.6%と最多で、半数を超えた。
10業界中6業界で、「可能だと思わない」が「既に1500円以上」と「可能だと思う」の合計を上回り、政府目標の達成には依然として厳しさがある。
賃上げはしても、消費回復にはつながらず
今回の最低賃金引き上げが今後の消費回復に効果をもたらすか尋ねたところ、「ある」と答えた企業は12.0%にとどまり、「ない」と回答した企業は49.4%と約半数に上った。最低賃金の上昇を消費拡大に結びつけることには懐疑的な見方が多い。
企業からは、「最低賃金が上がっても、社会保険料や税金を減らして可処分所得を増やさなければ消費に回らない」(各種商品小売、大阪府)、「賃金が上がった分、貯蓄や投資など将来の備えに回る」(繊維・服飾品小売、滋賀県)といった声が目立った。
帝国データバンクは、「可処分所得が増えず、年金など将来への不安も強い中で、最低賃金の改定による消費回復効果を悲観的にみる企業は多い。今後はその効果を慎重に検証する必要がある」と分析している。
本調査は全国2万5546社を対象にインターネットで実施した。有効回答は1万554社(回答率41.3%)。調査期間は2025年9月16〜30日だった。
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