「トーク力」「キャラ」がなくてもトップ営業に?! ヒアリングの質を高める簡単な方法:中編(3/3 ページ)
顧客へのヒアリングをする際に意識するべきポイントはあるのか。どうしたら顧客の“真の課題”を聞き出すことができるのか。
自己中営業から脱却するために必要なこと
藤島氏: 眼前可視化って単なるテクニックではなく、営業のスタンスそのものを変えますよね。
菊池氏: 相手に関心を持つことに特化したスキルなので、自己本位の営業ではなくなります。
従来の営業は一方通行。課題を聞くか引き出すか、自分の売りたいものを押し付けるか……。でも眼前可視化は双方向で、画面を一緒に見ながら「共有する」のです。お客さまが何を思ってるのか、なぜそう思うのか、どのくらい困ってるのか──意識を完全に相手に向けることができます。
藤島氏: 心の矢印が自分じゃなくて、お客さまに向くんですね。
菊池氏: 従来の営業は自己本位なんです。オラオラ系の営業もいるし、中には自身の承認欲求を満たす手段として営業をやってる人もいる。でも眼前可視化は真逆です。
藤島氏: 「俺が売る」ではなく「お客さまと一緒に考える」というスタンスですね。
従来の「一方通行」な営業って、結局個人の「トーク力」や「キャラクター」で押し切るスタイルですよね。なぜそれが正しいとされ続けてしまったのでしょうか?
菊池氏: 先人が「トーク」や「キャラ」にしがみついてきてしまったのではないでしょうか。「喋りで仕事するんだ」というおじさん、おばさんが、自分たちの話術を既得権益のように守ってきたんですよ。
でも実は、営業が嫌で辞める人が多いのは、そういう従来の営業スタイルが原因なんです。30歳手前で辞める人が本当に多い。一方的に喋る、強引に押し切る、相手の話を聞かない──そういうコミュニケーションにストレスを感じているのでしょう。
藤島氏: トーク力やキャラは才能のようなものなので、それを求められる営業スタイルは、不得意な人には地獄ですよね。
菊池氏: そうなんです。でも眼前可視化は誰でもできる。むしろ従来の営業より簡単なんです。お客さまと建設的に情報交換すればいいだけですから。口下手な人ほど、画面を見せながら丁寧に確認するから、逆に信頼されるんです。
藤島氏: 眼前可視化を全営業が進めれば、キャラクターやコミュニケーション力、トークスキルで勝負している名物営業は必要なくなりますね。
菊池氏: そうしたら、営業を志す人が増えるかもしれない。営業の楽しさは、顧客とディスカッションしながら課題解決をしていく点にあるんです。
買ってもらわなくても、生々しく世間を知って自分が成長できる。若手に営業という仕事を好きになってもらいたいですね。
藤島氏: トークやキャラクターは才能ですが、眼前可視化はスキル。今日から誰でも始められますよね。ただ、才能に依存すると属人化してしまう。
菊池氏: 眼前可視化で言語化して文字で残していけば、それは組織の資産になる。属人化せず、再現可能で、誰でも共有できるんです。
藤島氏: ベテラン営業の「暗黙知」が「形式知」に変わるということですね。
菊池氏: その通り。営業未経験の若手でも、ベテランの商談記録を見れば、どう顧客と向き合えばいいかが分かる。営業組織全体の底上げにつながるんです。
菊池明光
株式会社可視化代表取締役社長
1978年埼玉県。早大政経学部を卒業後、(株)リクルート入社。 13年間勤務し退社、ベンチャー2社を経て、2016年(株)可視化を創業。 超有名企業から中小企業まで「営業ノウハウ可視化」のコンサルティングを実施。著書は「とにかく可視化:仕事と会社を変えるノウハウ」新潮新書。2024年上半期_新書売上_ランキング4位。
藤島誓也 株式会社openpage代表取締役
2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。2024年にはキヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本提携を行い、国内大手企業のデジタルセールス戦略推進を支援している。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「代理店が売ってくれない」と嘆く前に パートナー営業で成果を出す方程式とは
多くの日本企業は営業手法に「代理店販売・代理店営業」の方式を採用している。しかし、「パートナーが売ってくれない」「そもそもパートナーにやる気がない」など課題は多い。どうしたらパートナー営業で成果を出せるのか?
「ChatGPT一択」ではない 営業のプロが解説、商談のレベルを底上げする生成AIサービス活用法
営業パーソンの生成AI活用に注目が集まっている。生成AIと聞くと、「ChatGPT」を思い浮かべる方が多いが、生成AIはChatGPT一択ではない。営業が使うべき生成AIサービスは何か、具体的な活用方法について解説する。
「ソリューション営業」はもう古い! これからの時代に求められる「インサイト営業」の有効性
日本では長年、ソリューション営業が正義とされ、課題解決型の営業アプローチが求められてきました。一方昨今米国では、市場動向や顧客状況の力学に迅速に適応し、顧客が自覚をもしていない未知のニーズを解き明かす「インサイト営業(Insight Selling)」が新たな営業スタイルとして注目を集めています。日本で正攻法とされていたソリューション営業は限界を迎えているのです。
優秀な営業マンにあえて「売らせない」 オープンハウス流、強い組織の作り方
案件減らし売上2倍に アドビの最強インサイドセールス部隊は、いかに大口受注を勝ち取るのか
アドビでは、約2年ほど前からBDRを強化している。明確に絞ったターゲット企業からの受注獲得に注力した結果、とあるチームでは≪案件数が半数以上に減少したにもかかわらず、受注金額が倍増≫した。インサイドセールスは「若手の登竜門」として新人が多く配置されるケースが多いが、同社のインサイドセールス組織は一味違うという。



