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“AIリストラ時代”に必要なスキルとは? 「産業の勝者」の決め手を考える

OpenAIの研究者、シャマル・ヒテシュ・アナドカット(Shyamal Hitesh Anadkat)氏が、「これからのAI時代に必要なスキル」を「Age of the Agent Orchestrator」という記事内で発表した。

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 これからのAI時代にどのようなスキルを身につければいいのだろう。いろんな人がいろんなことを語っている。プログラミングは必須だと言われて、プログラミングを学んでいる小学生も多い。しかし自動プログラミングツールが急速に進化し始め、米国ではプログラマーのリストラが始まった。

 AIにはクリエイティビティやデザインセンスがないと言われていたが、ちょっとしたイラストやデザインは誰もがAIツールを使って簡単に生成するようになった。機械翻訳の精度が向上すれば巨大市場ができると言われてきたが、言語モデルのおまけ機能のような感じで、精度の高い機械翻訳がいつの間にかできるようになっていた。

 画像生成ツールが登場したときに、ある著名なAI研究者が「画像生成は比較的簡単だが、映像は情報量が桁違いで、動画生成ツールはあと数年は登場しないだろう」と語っていた。しかしその数カ月後には動画生成ツールが登場した。

 技術動向を追っていない人には、これから必要になるスキルがどのようなものなのか分かりようもないし、技術動向を追っている専門家であっても、未来予測はかなり難しいのだ。


“AIリストラ時代”に必要なスキルとは?(写真提供:ゲッティイメージズ)

“AIリストラ時代”に必要なスキルとは?

 今の時代、未来は予測できない。個人的にはそう思っている。できることは、研究開発中の最先端技術が完成し、リリースされたときに、その技術が社会にどのようなインパクトを与えるのかを想像することだけだと思う。

 よって評論家や研究者の意見に耳を傾けず、ただただ世界のトップレベルのAI企業が何を作ろうとしているのかだけに注目していきたいと思う。

 前置きが長くなったが、世界のトップレベルのAI企業の1つであるOpenAIの研究者、シャマル・ヒテシュ・アナドカット(Shyamal Hitesh Anadkat)氏が「Age of the Agent Orchestrator」という記事をこのほど発表した。これからのAI時代に必要なスキルはAIエージェントを指揮する力だというわけだ。

 同氏によると、これまでは専門知識に希少価値があった。法律の知識は弁護士、税務の知識は税理士、医療の知識は医師というように、専門知識は誰もが持てるものではなく、それを持っている人材は重宝された。

 しかし税務申告などの高リスク業務でも、AIエージェントが申告書を作成し、別のAIエージェントがそれを検証し、さらには別のAIエージェントがそれを改善するというワークフローを設計すれば、人間が持つ高度な専門知識は不要になった。専門知識は民主化され、適切なエージェントワークフローを組むことのできる人が大きな価値を生むようになる。

 そうしたエージェントワークフローのボトルネックになるのが、半導体や電力など計算に必要な資源や、クラウドサービス費用、実験室の時間、人間によるレビューになるという。

 実験室の時間とは、デジタルのシミュレーション上ではうまく動作することがすぐにできたワークフローも、実際の現実社会で実証・検証するのに時間がかかるという話だ。例えば生成AIのおかげで創薬プロセスの前半の設計が大幅に短縮されても、候補化合物を細胞・動物で検証し、最高品質で合成する工程は依然として数週間〜数カ月かかるわけだ。ワークフローがデジタル世界で高速化されても現実世界の実験・検証部分で減速してしまえば、どれだけ計算資源を投入しても出力結果は頭打ちになってしまう。

 人間のレビューは、エージェントワークフローの中でも最重要項目の一つだ。特に金融や医療など高リスクの領域では、エージェントワークフローにおける人間によるレビュー工数が増える傾向にある。

 計算資源、クラウド費用、実験室の時間、人間レビューというボトルネックを考慮して、最も効率よくエージェントワークフローを回せるような設計力が今後最も必要とされるスキルになるという。どのエージェントに半導体の利用時間を何秒提供すべきか、いつ人間のレビューを挟むべきか、夜間の電力価格が安い時間帯にどのエージェントに大量の仕事を割り当てるべきか、といったことを考慮する必要が出てくるわけだ。そして計算資源と、ロボット、物流、研究設備などのリアル資産との橋渡しに成功した企業がこれからの産業の勝者になるとしている。

 こうしたエージェントワークフローの設計に必要なプロンプト作成、報酬設計、A/Bテスト、ログ監査などのエージェントリテラシーとでも呼ぶようなスキルが、今後、全てのビジネスパーソンに必要なスキルになるという。表計算ソフトのExcelを使いこなすことが、ほぼ全てのビジネスパーソンの必須スキルになったように、エージェントリテラシーがこれからの時代の必須スキルになるという。Excelのスキルがビジネスパーソンの常識になるまでに10年程度かかったと言われるが、エージェントリテラシーはより短期間に広まるはずだと同氏は指摘している。


(写真提供:ゲッティイメージズ)

本記事は、エクサウィザーズが法人向けChatGPT「exaBase 生成AI」の利用者向けに提供しているAI新聞「AI時代に必要なスキル、AIエージェントリテラシー」(2025年5月21日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


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