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日立、フィジカルAIに注力 「Lumada3.0」で社会インフラ業務を変革Google Cloudと協業

日立製作所が「世界トップのフィジカルAIの使い手」を目指す――。 執行役常務 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニットCEOの細矢良智氏は「それぞれの領域で培ってきた取り組みがドメインナレッジとなり、それをフィジカルAI、エージェンティックAIとつなげることで、これまでにない力を発揮すると考えています」と話した。

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 日立製作所が「世界トップのフィジカルAIの使い手」を目指す――。

 同社はGoogle Cloudとの戦略的アライアンスを推進。社会インフラ分野におけるフロントラインワーカーの業務変革を加速させる。AIエージェントの開発・活用を通して、電力や鉄道、製造ラインなど現場の生産性向上を図る。


日立製作所 執行役常務 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニットCEOの細矢良智氏(撮影:河嶌太郎。10月10日に東京本社で開催したAI戦略説明会にて)

Gemini Enterpriseを活用したAIエージェント開発 内容は?

 10月10日に東京本社で開催したAI戦略説明会で、日立製作所 執行役常務 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニットCEOの細矢良智氏は「日立はAI研究に関して約60年の歴史があり、制御運用の最適化や画像・言語処理など、今でいうAIのユースケースをたくさん積み重ねてきました。それぞれの領域で培ってきた取り組みがドメインナレッジとなり、それをさらに進化したフィジカルAI、エージェンティックAIとつなげることで、これまでにない力を発揮します」と話した。

 「これを私たちはLumada3.0と呼んでいます。これによってミッションクリティカルな社会インフラ革新に挑戦していきます。」(細矢氏)

 近年、社会インフラの保守や製造業務では、人手不足と熟練技術者の高齢化が進み、技術継承が喫緊の課題となっている。同社は2024年5月、Google Cloudと戦略的アライアンスを締結。生成AIを活用した企業の生産性向上やイノベーション創出を推進してきた。

 Geminiは、テキスト・画像・音声・動画など複数の情報を同時に処理するマルチモーダルAIとして設計されているため、製品や設備といった物理的データを正確に扱う必要のある現場業務に高い親和性を持つ。


日立はAIを活用した生産性の向上を目指す

 今回は、Geminiを基盤として構築された対話型AIプラットフォームであるGemini Enterpriseを活用し、専門知識がなくてもノーコードで現場ニーズに応じたAIエージェントを構築。現場業務を効率化する。

 日立は、すでにAIエージェントの開発環境「Agent Factory」を構築している。Google Cloudの技術を活用することによって、現場に応じたAIエージェントを簡単かつ迅速に開発できる環境へ強化していく。

 現在、電力や産業分野の保守事業を担う日立パワーソリューションズで、技術検証を開始している。例えば、受変電設備の点検作業では、ボルトの取り付け方向の誤りやコンデンサの電極配線の接続ミス、放電クリップの取り外し漏れなど、人的ミスの発生が懸念されていた。

 検証では、Gemini Enterpriseを活用したAIエージェントに保守作業の前後で撮影した画像を比較させ、原状復帰の合否判定が可能かを試行したという。その結果、保守員がAIエージェントに画像を読み込ませると、設備や機器に問題がないかをアラート情報として受け取れることが確認できた。


AIエージェントを活用した作業プロセスイメージ

 従来は紙のチェックリストで確認していた作業をデジタル化し、人的ミスの削減や見落としを防ぐためのダブルチェックの精度向上を図る。

 今回の検証用AIエージェントには、重要なチェックポイントや過去の故障事例、注意点を自然言語で入力し、正しい画像と不具合のある画像を複数用いてAIに学習させている。スタート時点ではAIの専門家の支援が必要ではあるものの、調整や試行は現場の担当者自身が実行できる仕様にした。


画像比較による原状復帰漏れの防止のイメージ

 今後は、画像に加えて動画データを活用し、作業手順の逸脱検知や報告書の自動生成にも挑戦する。作業負荷軽減と熟練技術の継承を両立させる構えだ。こうしたノウハウを生かし、AIの知識がない社員でもノーコードでエージェントを開発できるよう「AIエージェントの民主化」を進めていくという。

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