オペレーター1人で30社対応 “混乱現場”を救ったコンタクトセンター改革の裏側:新人教育1.5カ月→2週間に パーソルG企業の挑戦(1/2 ページ)
複数企業の問い合わせ窓口を同時に担当する「シェアード型コンタクトセンター」では、オペレーターが電話を取るたびに「どの企業に対する問い合わせか」を瞬時に判断しなければならない。シェアード型コンタクトセンターを運営するパーソルコミュニケーションサービスは、こうした課題に対し、デジタル技術を活用した業務改革に着手した。
複数企業の問い合わせ窓口を同時に担当する「シェアード型コンタクトセンター」では、オペレーターが電話を取るたびに「どの企業に対する問い合わせか」を瞬時に判断しなければならない。限られた時間で企業ごとのシステムを立ち上げ、企業ごとのマニュアルを探し、企業ごとの問い合わせに対応していく──そんな状況は、オペレーターに大きな心理的負荷をもたらしていた。
シェアード型コンタクトセンターを運営するパーソルコミュニケーションサービス(横浜市)は、こうした課題に対し、デジタル技術を活用した業務改革に着手した。電話着信と同時に応対ガイドが自動表示される仕組みを構築し、わずか数カ月で新人教育期間を1カ月半から2週間へ短縮することに成功したのだ。
CXビジネス本部 カスタマーサクセス事業部の折戸正行氏(第二サービス部 マネジャー)と岡部亮祐氏(第二サービス部 部長)に、改革の舞台裏を聞いた。
オペレーターが「1人で最大30社対応」も シェアード型特有の課題
パーソルコミュニケーションサービスが福岡県の黒崎サポートセンターで運営するのは、複数企業の問い合わせ窓口を共有する「シェアード型コンタクトセンター」だ。一般的なコンタクトセンターが1社専任で対応するのに対し、シェアード型では1人のオペレーターが複数社を並行して担当する。
シェアード型の特徴について、折戸氏はこう説明する。
「1つの企業だけでは稼働が満たないような、月50件や100件といった小規模な問い合わせ業務を複数組み合わせることで、効率的な運営を実現しています」
対象業種も幅広い。インターネットプロバイダーの技術サポート、代表電話の一次受付、ECサイトの受注処理、社内ヘルプデスク、ビジネスパートナーからの問い合わせなど、多岐にわたる業務を担当する。オペレーターによっては、30もの企業やサービスの窓口を担当するケースもあるという。
こうした運営形態のため、シェアード型コンタクトセンターには独自の課題がある。
まず、オペレーターの業務は複雑だ。電話が鳴ると、どの窓口かを電話機の表示で判断する。その上で、紙のマニュアルを探したり、事前に開いておいたデジタルガイドを参照したりして、「どう名乗るべきか」「どの顧客管理システムに入力すべきか」を確認しなければならない。
また、応対の記録方法にも課題があった。従来は自由記述形式だったため、オペレーターによって記録内容の粒度や表現が異なっていた。当時の状況を、岡部氏はこう分析する。
「オペレーターがお客さまにお話しする内容は標準化されているので、大きな違いはありません。ただ記録の仕方については、メンバーによって内容が異なっていました」
例えば、あるメンバーは自分が話した内容を記録し、あるメンバーは顧客が話した内容を記録していた。記録の内容は、企業やサービスの改善に活用される。このようなばらつきがある中で、カスタマーサクセスにおいて重要な「顧客の潜在的なニーズ」の把握につながる情報をキャッチすることは困難だった。
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