2015年7月27日以前の記事
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アニメ産業に忍び寄る「制作崩壊」 中小スタジオの苦境続く

アニメ制作会社の倒産・休廃業が急増し、2025年は過去最多ペースに。需要拡大の一方で、円安や人件費高騰により「利益なき繁忙」に陥る制作現場。帝国データバンクは業界の構造改革を促している。

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 帝国データバンクが行った「アニメ制作会社」の倒産・休廃業・解散の調査によると、2025年1〜9月に発生したアニメ制作会社の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は2件、休廃業・解散は6件で、計8件が市場から退出した。年間で過去最多だった2018年と同水準で推移しており、3年連続での増加が予測されている。

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「アニメ制作会社」の倒産・休廃業・解散調査(ゲッティイメージズ)
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「アニメ制作会社」倒産・休廃業・解散(出所:プレスリリース、以下同)

 過去5年間に市場から退出したアニメ制作会社のうち、約半数は直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」だった。グロス請を担当していた7月破産の「エカチエピルカ」(北海道札幌市)や、『ささやくように恋を唄う』などの放映延期で話題となった「クラウドハーツ」(東京都杉並区)、3DCGアニメーションの制作を手がけた「5(ファイブ)」(東京都中野区)などが経営破たんした。

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倒産・休廃業・解散となったアニメ制作会社の業態(2016年以降)

円安と急激な受注増が経営を圧迫

 コロナ禍での受注減から一転し、需要が急増したことで供給能力が追いつかない中、円安の影響で海外スタジオへの外注費が高騰し、収益性が悪化したケースもあった。

「利益なき繁忙」続く制作現場

 アニメ制作産業は、海外での高い評価を背景に需要が拡大し、市場規模が過去最高を更新している。しかしその一方で、制作現場ではコスト増を価格に転嫁できない「利益なき繁忙」の状態に陥っているという。

 帝国データバンクの調査では、元請制作会社の約6割が「2024年度の業績が悪化した」と回答した。増収ペースを上回る制作コストや人件費の上昇により、IP(版権)収入など安定した収益基盤を持たない中小制作会社ほど苦境に立たされている。さらに、2025年秋放映予定の作品の延期も相次ぎ、アニメーターなどの人手不足が業界全体で顕在化しつつある。

人材育成と取引環境の改善が急務

 帝国データバンクは「収益力が低く資金面で不安定な体質を抱えたままのケースも多く、アニメ制作産業の持続的な成長に向けては、適正な取引環境の構築やアニメーターなどの人材育成が急務だ」と指摘する。

 今回の調査は、負債1000万円以上・法的整理による倒産を対象としている。休廃業・解散は、法的整理を除き、特段の手続きを取らずに企業活動を停止した状態(休廃業)や、商業登記上での解散(「みなし解散」を除く)を確認した企業を含む。調査期間は2000年1月1日〜2025年9月30日まで。

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