マックもスタバも「紙ストロー」廃止 新たに導入した「エコなプラスチック」は本当に環境効果があるのか?(3/3 ページ)
環境への配慮から、紙ストローを導入してきたマクドナルドとスタバが、2025年にいずれも廃止してプラ製へ切り替えた。プラ製ながら環境にも配慮していることをアピールしているが、果たして本当に効果はあるのか?
果たして効果はあるのか
マクドナルドとスターバックスは環境配慮の面から紙ストローを廃止しようにも、石油由来のバージン品を用いたプラストローを導入するわけにはいかなかった。そこで、技術が確立したリサイクル、バイオマス製プラを採用したとみられる。ただし石油代替という点で聞こえは良いものの、条件次第では逆効果の場合もある。
リサイクルプラの場合、ペットボトルのようにリサイクル率が85%を超える回収物であれば効果は大きいかもしれない。だが回収率の低いプラスチックでは、工場までの運搬にトラックの燃料を使うため逆効果となるだろう。
また、プラスチックを分子レベルまで分解する「ケミカルリサイクル」の場合は、必ずしも環境負荷低減にはつながらない。ケミカルリサイクルには高温・高圧の条件を要するリサイクル法も多く、高温・高圧を維持するために必要な燃料と電力を考慮すると、石油使用量がむしろ増える場合もある。
バイオマスプラに関しても同様、植物からプラスチック原料を合成・抽出する段階で特殊な薬品や高温環境を要するものが多い。特殊な薬品の合成に石油由来成分が使われていれば本末転倒である。バイオマス度だけを評価基準にすると、木を原料とする紙ストローの方が有効といえるかもしれない。
環境対応のアピールを目的に今後もリサイクルプラやバイオマスプラを採用する企業は増えるだろう。だが、石油由来成分を使用した場合と比較して「実際にどの程度の石油使用量・CO2削減効果があるのか」を、企業は公表すべきではないだろうか。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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