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若手の「営業離れ」が止まらない AI・SFA導入の前に、“商談のかたち”を見直すべき理由後編(2/2 ページ)

「営業配属だけは絶対イヤです」──若者の営業志望率が低下している。営業パーソンの減少が見込まれる中で、“属人化”の課題をどう解決していくべきか、考えていきたい。

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SFAだけで、営業の“型化”はできない

藤島氏: 営業の属人化を解決するために「型化」を進めようとする企業は多いですが、うまくいっていないケースが多いと感じています。

菊池氏: 型化はどうやって進めているんですか?

藤島氏: SFAをベースにパイプラインを組んで管理しようとするんですが、結局それは表面的なんです。細かな営業のヒアリングや提案のところまで可視化できていないので、形骸化してしまう。

 SFAは契約情報中心にレポート・ダッシュボードで数値を見るツールなので、基本は数値管理がメインなんです。技術力のある日本企業が困っているのは、顧客を動かすためにどんな提案をして、商談後に案件をどのように運んでいるのかという点。さらにもう一段階細かいところなんです。

菊池氏: SFAは商談の中身が見えないから、結局ナレッジがたまらない。でも眼前可視化で残した議事録は、そのままナレッジの蓄積になるんです。過去の商談を見れば、あの顧客にはこういう提案が刺さった、この業界ではこういう課題が多い、というのが全部分かります。これが営業組織の宝の山になっていくんです。

AI任せは微妙? 議事録は自分で書いたほうがいい理由

藤島氏: ここで気を付けるべきなのは、最近増えているAI議事録ツールですよね。

菊池氏: AI議事録は、要は話しっぱなしの情報を整理しました、というもの。ちゃんとしたヒアリングをしていない、相手と目線が合っていない──そんな会話をAIで文字起こしして議事録作っても、価値が低い。眼前可視化は、お客さまと一緒に作るプロセスに価値があるんです。

藤島氏: 以前当社で、営業パーソンがお客さまと目線を合わせて作った議事録と、AIで自動で作ったものでは、後者の視聴率が半減していることが分かりました。

 一方で、眼前可視化で顧客と作った質の高い議事録をAIで分析・活用すると、革命的な価値が生まれると考えています。

 眼前可視化で作った議事録には、顧客の細かな状況や反応が記録されている。これをAIが分析することで、「この状況なら受注確度は70%」といった精度の高い予測ができます。さらに、次にどんな提案をすればいいのか、AIに相談もできますね。「この顧客にはこういう懸念があるので、こういう提案をしてはどうか」といったアドバイスが受けられるんです。

菊池氏: それはすごい。営業の世界が変わりますね。トップセールスと新人の違いも見えてきますよね。

藤島氏: そうなんです。トップセールスは「この発言の背景には何があるんだろう」「この懸念の奥にある本当の課題は何か」と常に一歩先を考えている。でも新人は言葉通りに受け取って終わってしまうことが多いものです。この思考プロセスの違いが、議事録のデータで初めて見えるようになるんです。これまで上司のマネージャーに頼っていたところが、AIで回せるようになる。

まとめ:営業を志す若者を増やすために経営者に求められること

菊池氏: 眼前可視化が当たり前になると、営業組織は根本から変わります。個人の記憶が、組織の記録になる。ベテランの頭の中にしかなかった顧客理解が、全員で共有できるナレッジになる。そして最も大きいのが、専門性が再現可能になること。10年かけて培った営業ノウハウを、新人が半年で身につけられる。

 トークやキャラクターではなく、顧客理解の深さで勝負できる営業スタイルが定着すれば、「営業配属だけはイヤだ」という声も減っていくと思います。


左:菊池明光氏、右:藤島誓也氏

藤島氏: 営業志望の若手が減少している今、営業組織は岐路に立っています。

 「俺の背中を見て学べ」から「一緒に画面を見て学ぼう」へ──。営業の属人化を解決する鍵は、商談の中身を顧客と一緒に文字で残すことにあるのではないでしょうか。SFAやAI議事録といった「後付けの仕組み」ではなく、商談そのものを変えることが重要です。

 10年後、あなたの会社に営業をやりたいという若手はいるでしょうか? その答えを決めるのは、今この瞬間の経営判断となるでしょう。

菊池明光

株式会社可視化代表取締役社長

1978年埼玉県。早大政経学部を卒業後、(株)リクルート入社。 13年間勤務し退社、ベンチャー2社を経て、2016年(株)可視化を創業。 超有名企業から中小企業まで「営業ノウハウ可視化」のコンサルティングを実施。著書は「とにかく可視化:仕事と会社を変えるノウハウ」新潮新書。2024年上半期_新書売上_ランキング4位。

藤島誓也 株式会社openpage代表取締役

2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。2024年にはキヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本提携を行い、国内大手企業のデジタルセールス戦略推進を支援している。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。

HP:https://www.openpage.jp/


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