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「双子の母親」だから分かった不安とニーズ 見過ごされていた「多胎育児」という超ニッチ市場にどう挑むのか(3/3 ページ)

少子化が進む中、さらにニッチな多胎児の親を対象にしたアプリが、この3月に誕生した。アプリを手掛ける企業を取材した。

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SOS機能では行政と連携

 SOS機能では各自治体の担当窓口に電話できるほか、子ども家庭庁が提供する「親子のための相談LINE」に接続できる。

 「行政が設置している窓口に電話しようと思っても、例えば『子育て支援課』や『こども未来局』のように一つの自治体が複数の窓口を提供していることがあり、連絡先に迷ってしまう課題がありました。私自身、相談窓口に迷ったことがあります。そうした課題を解決するのがSOS機能です。

 多胎親が相談できる窓口につなげる機能があり、300弱の自治体に対応しています。利用者が登録時に入力した郵便番号に紐づいて窓口を選定します」(同前)

 自治体が子育て支援関連の相談窓口を設置するのは当たり前となったが、多胎となると数が限られているという。momsでは今後、自治体と相談しながらSOS機能で対応できる自治体数を増やす計画だ。

今後の戦略は?

 momsはプレリリース後、1日で1000ダウンロードを記録するなどニーズの高さがうかがえる。11月3日時点でダウンロード数は5770件。とはいえ、超ニッチな市場であり、認知度を高めるには地道な活動が求められる。

 「SNS広告などに費用をかけても、そもそも超ニッチな市場であるため、効果は限られると考えています。私自身のInstagramフォロワー数が1万を超えており、取締役も1.7万人のフォロワー数がいて、運営チーム全体で25万人のフォロワーがいるので、そこで認知度向上に努めてきました。そうした宣伝が一巡したため、今後は多胎支援団体と交流しながらチラシを配布するなど、オフラインの活動を強化するつもりです」(同前)

 SNS広告はターゲティングの精度が高いと言われているが、ユーザー全体に妊婦・育児親が占める割合は低く、多胎児を育てる親はその中のさらに一部。見込み客に宣伝が届く可能性はかなり低いと考えられる。したがって、ニッチな市場では同じ属性が集まるフォロワー向けの宣伝やオフラインでの活動が有効といえる。

 今後の方針について牛島氏は次のように話す。

 「双子ベビーカーでも外出できる場所を表示するマップ機能や、2〜3人の子どもの育児記録を同時にできる機能などを実装したいと考えています。国内は少子化で数が減ってしまうので海外展開も見据えており、多言語に対応する計画も立てています。世界に目を向ければ年間160万組まで可能性が広がりますから」(同前)

 超ニッチ市場とはいえ、仮に妊娠中から6歳児を育てる親までを想定した場合、世界では最大約1000万人の市場になるという。福岡発のベンチャーが世界に対してどう戦っていくのか、今後の展開が注目される。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


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