渋谷区が挑んだ「問い合わせ改革」 区民満足度「5点中4.8点」を実現した“ナレッジDX”の全貌(2/3 ページ)
自治体に寄せられる問い合わせは、多様化・複雑化の一途をたどっている。限られたリソースの中での問い合わせ対応が、職員の大きな負担となっている自治体も少なくない。2024年1月から「デジタルコンタクトセンター」の構築を開始した渋谷区では、職員の負担軽減と区民サービスの向上をいかにして両立させているのか。
1年半で一次解決率は17.0%→35.6%に倍増
地道なナレッジ蓄積の結果、コンタクトセンターの一次解決率は、改善の兆しが見られるようになった。2024年1月時点では17.0%だったが、2025年7月時点では35.6%にまで向上。この改善による影響は、各課にも出始めていると言う。冨澤氏は次のように話す。
「担当課の電話応対が減りました。特に、一般的な手続きに関する問い合わせの多い税務課や住民戸籍課は、その効果を実感していると聞いてます」
まさに、デジタルコンタクトセンター立ち上げ時に構想していた、「区役所全体の業務負担削減」が実現し始めている。その効果は、こうした「取り次ぎ削減」にとどまらない。さらに一歩進んだ“業務そのものの巻き取り”が、職員の働き方を大きく変えつつある。
その象徴的な事例が、広報コミュニケーション課が所管する「区民相談の予約業務」だ。従来、法律相談や不動産相談の予約は、同課の職員が直通電話で受け付けていた。しかし、ナレッジの蓄積でスキルや経験に関係なく効率的な電話対応が可能になったことや、生成AIの導入などによる業務プロセス改善によって、コンタクトセンターに「余力」が生まれた。これにより、新しい業務をセンターに委託できるようになったのだ。
その結果、広報コミュニケーション課が受けていた「区民相談の予約業務」は、”ゼロ”になった。同課ではその空いた時間で、コンタクトセンターの運用改善といった、より創造的な業務に時間を割けるようになったという。
同様の取り組みは、他課でもスタートしている。例えば、道路課で直接受けていた「道路の不具合に関する地域住民からの報告」を、コンタクトセンターで受けられるようにした。このように、コンタクトセンターの好例は、徐々に波及していっている。
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