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一度はV字回復したが、再び赤字に転落…… 鴻海に左右されたシャープの歴史を振り返る(2/3 ページ)

液晶などで存在感を示したものの、2010年代に赤字転落して債務超過にも陥ったシャープ。そこから鴻海の力を借りてV字回復を果たしたが、近年はまた不調に陥っている。同社の歴史を振り返る。

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2007年度をピークに、業績が低迷

 しかし、液晶市場では1990年代後半から台湾・韓国が勢力を伸ばし、2000年代からは中国も参入。シャープは海外勢に追いやられる形でシェアを縮小した。当時のパネルメーカーによる設備投資額を振り返ると、シャープが年間1000億円台を投じていたのに対し、海外勢は年間2000億円超を投じていたとされる。韓国のLGディスプレイに至っては、2005年単体で4000億円以上を投じている。そもそも規模で負けていたわけだ。供給先に関してもシャープは自社のテレビを優先し、生産規模に見合う新規開拓を進められなかった。

 その後、リーマンショックと円高がシャープを襲う。全社売上高は2008年3月期の3.4兆円をピークに右肩下がりが続き、2016年3月期には債務超過に陥った。

 手を差し伸べたのが鴻海だ。鴻海はゲーム機やスマホの受託生産を手がける一方、自社ブランドとしての製品に乏しかった。ブランドとしてのシャープや、液晶の技術を欲していたとされる。

 鴻海の創業者である郭台銘氏は側近の戴正呉氏をシャープに送り込み、堺工場の売却や徹底したコスト削減策で同社を立て直した。細かい部分では工場内のエスカレーターを廃止したほか、社員による中国出張の滞在先に鴻海の施設を使わせたとされる。再生策により、シャープは2017年3月期から2022年3月期までの間、営業黒字をキープした。

手放すつもりが再取得で業績が悪化

 しかし、SDPを再度子会社化した事で業績が悪化してしまった。

 2021年、保有するSDPの株式を手放すと公表していたが、2022年に供給の安定化や見込まれる需要拡大などを理由に完全子会社化。その後、大型パネル市場が悪化して、2023年3月期は営業赤字に転落し、最終益もSDP関連の減損損失を計上したことで2608億円の赤字となった。


シャープの近年の業績(同社IR資料を基に筆者作成)

 SDPの経営権は2012年から16年にかけて、シャープから郭台銘氏の投資会社であるSIO(SIO International Holdings Limited)に移ったはずだが、再取得したことで業績が悪化した流れである。

 SDPに視点を当てると、2016年までにSIOが取得した後、シャープが再取得する2022年までの間に経営権がサモアの企業に移った。2022年には、郭台銘氏が台湾での政界進出を目的に鴻海のトップから離れており、SDPが不要になったのかもしれない。

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