NVIDIAの“分かりやすさ”に学べ 自治体手続きを生成AIで最適化する方法【プロンプト紹介】（2/2 ページ）

自治体窓口における手続きの「分かりにくさ」はどこから生まれるのか――。筆者は米NVIDIAが販売を開始した個人向けAIスパコン「DGX Spark」の“段階別ガイド”の設計思想が、自治体の手続き案内を分かりやすくするヒントになると指摘する。

[川口弘行，ITmedia]

窓口案内を段階別に最適化　今すぐ使えるプロンプト例を紹介

　自治体の窓口業務が難しい理由の一つは、多様な住民一人一人の理解度や手続きの難易度に合わせて、最適な説明を提供しなければならない点にあります。分かりやすさを徹底しようとすると、説明がどうしても長くなり、結果として窓口での応対時間が延び、他の住民を待たせてしまうことにつながります。つまり、分かりやすさと冗長さはトレードオフの関係にあります。

　一方、最近よく耳にする「誰ひとり取り残さない」行政サービスのために、どこまで説明を噛み砕いていくべきなのかも悩みどころです。

　これについては、筆者が考える理解度の下限は「現時点での中学校卒業レベル」ではないかと考えます。日本の義務教育がここを基準としています。

　つまり、分かりやすさの判断に迷ったら「今の中学3年生でも理解してもらえるだろうか」と自問するのがよいと思います。

　そこで上述したDGX SparkのPlaybookの構成を参考にして、以下のような流れで、住民窓口の手続きを解説するコンテンツを作成してみましょう。

• 手続きの解説を理解度や難易度ごとに段階別に分ける
• 概要説明として、次の事項を事前に示す
• 基本的な考え方：そもそもこの手続きが誰のためのもので、どのような目的によるものなのか
• 達成できること：この手続きで申請者が得られるもの
• 始める前に知っておくべきこと：知っておくべき法令知識
• 前提条件：申請者自身について、事前に準備しておくもの、調べておくもの
• 所要時間と留意事項 ：手続きにどの程度の時間がかかるのか、この手続きにより失う可能性があるものは何か
• トラブルシューティングの案内を示す

　これらのコンテンツを人力で作成するのは大変なので、今回は生成AIを使ってみましょう。

【プロンプト】

以下の要件に基づき、{ 児童手当の認定請求 } を市民向けに分かりやすく解説するコンテンツを作成してください。

文章は日本語・フォーマルな文体で統一し、Markdown形式でページ分けして作成してください。

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■ 全体要件

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- 日本国内の制度である { 児童手当 } を対象とすること

- ファイルがアップロードされている場合は、そのファイルを読み取り、内容の理解に努めること

- インターネット検索により複数の公的情報源を参照し、特に「各自治体の公式サイト」の情報を優先的に用いること

- 申請様式について、記入項目を抽出し、整理すること

- 特定自治体向けの調整は不要（後でユーザーが調整）

- 市民（申請者）の立場で理解しやすい説明とすること

- 可能ならば図を用いて説明すること

- 各ページ約2,000字を目安とする。特に「手続の流れ」は詳細に記述すること（記入項目ごとの説明も含める）

- 手続ステップには「（1）事前準備→（2）必要情報・書類の整理→（3）書類記入→（4）提出→（5）完了確認」を全て含めること

- 可能であればマイナポータルなどのオンライン申請にも言及すること

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■ 出力形式（Markdown）

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以下の7ページ構成で作成すること。

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# 1ページ目：手続概要

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以下を必ず記載すること。

●基本的な考え方

- 児童手当制度の目的

- 誰のための制度か（対象者の基本像）

●達成できること

- 申請者が児童手当の認定請求によって得られる結果（支給開始、認定通知など）

●始める前に知っておくべきこと

- 主な法律（例：児童手当法）

- 制度の基本的な仕組み

- 後述する「理解度レベル1〜5」と連動させること

●前提条件

- 申請者が事前に準備しておく情報

- 必要書類（出生届提出後の必要書類、転入時のものなど）

●所要時間と留意事項

- 一般的な審査期間

- 提出遅れによる不利益（例：支給開始月への影響）

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# 2〜6ページ目：理解度・難易度レベル別の解説（5段階）

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レベル1〜5のページをそれぞれ作成すること。

●各レベルで記載する内容（統一構成）

1. そのレベルで理解しておくべき基礎知識

- レベル1：中学3年生でも理解可能

- レベル5：法令知識はないが成人として高度に理解できる内容

2. 手続の作業ステップ（詳細に）

- 事前準備

- 必要書類の整理

- 書類の記入内容を項目ごとに解説

- オンライン申請の可否・利用方法

- 提出方法（窓口・郵送・オンライン）

- 完了通知までの流れ

3. 注意点・実務ポイント

- 書類不足の注意

- 期限管理

- 世帯状況（別居・離婚協議中など）に関する注意点

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# 7ページ目：トラブルシューティング

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以下を記載すること。

●よくある相談・トラブル事例

- 必要書類の不足

- 提出期限遅れ

- 引越し時の対応

- 主たる生計維持者の判断

- 口座名義の問題

●各トラブルの原因・解決策・相談窓口の案内

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■ その他要件

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- 読者は「日本語を母語とする一般市民」を想定する

- 自治体間で制度運用に差がある場合は「自治体により異なる場合があります」といった一般化した記述を行う

- 法令の引用は正確に行うが、必要に応じて平易に解説する

　上記のプロンプトをChatGPTの「Web検索あり」で申請書の様式をアップロードしたうえで、動作させてみました。

プロンプト実行結果

　若干物足りない出力結果になりましたが、難易度に応じた説明はうまくできているようです。プロンプトの中で { } の箇所を別の手続き、別の法令に変えることで、その他の手続きも同じように作成することができます。

　ChatGPTの無料版でも動作するので、ぜひお試しください。