「生成AIを使うとバカになる」は本当? AI時代に価値が上がる人の共通点(2/3 ページ)
ちまたでは、「生成AIを使うほどに頭が悪くなる」と警鐘を鳴らす人もいる。これまでは数時間かけて情報を集め、読み込んで理解していたようなことも、生成AIに聞けば一瞬で答えを返してくれる。それで満足して深く考えることをしなくなってしまう、という理屈だ。生成AI活用をしすぎて“バカ”にならないために、何ができるか。
「正解がある仕事」から消えていく
生成AIが脅威とされる理由の一つに、安泰と思われてきたホワイトカラーの仕事が侵食されつつあるという現実がある。
例えば、新人に任されることの多かった議事録の作成が生成AIで事足りるようになってきた。契約書のレビュー、顧客向けの印刷物のデザイン、翻訳など、以前は外部の専門家に頼んでいたことが、生成AIで済むようになったという人も多いだろう。
しかし、それによって弁護士、デザイナー、翻訳家の仕事が全てなくなるわけではない。ホワイトカラーの仕事の中でも特に代替されやすいのは、はっきりとした「正解」がある仕事だ。
議事録の作成であれば、「会議の内容を過不足なく記録する」という「正解」(到達すべき品質)がある。契約書レビューにおいても、「契約におけるリスクを発見する。修正・追記すべき条項などを提案する」ということを漏れなく正しく行うという「正解」がある。
人間に残される仕事は「問い」を立てること
逆に、まだ「正解」が定まっていないことについて自分たちなりの「正解」を探し求めること、そのためにまず「問い」を立てることは、生成AIに任せることができない。
例えば、新たに立ち上げるブランドのロゴデザインが必要になったとき、プロに頼まずに生成AIでデザインすることは可能かというと、それは場合によりけりだ。
「とりあえずロゴがあれば、デザインのよしあしはそれほど問題ではない」というなら、時間やお金をかけずに生成AIでやってしまうのが理にかなっている。それによってプロの仕事は減るが、このようなやりがいの低い案件が減っていくのは、デザイナーにとっても良いことではないだろうか。
プロのデザイナーは、デザイン案を描く前に「問い」を立てる。クライアントへの質問や市場調査を通じて、そのロゴが伝えるべきメッセージを明確にする。その過程で、会社の沿革や企業風土、ターゲット層のトレンドなど、クライアント自身が気づいていない重要な要素をも掘り起こし、デザインに反映させる。これは社外のプロだからこそできることで、その価値が認められる限り、デザイナーの仕事はなくならないはずだ。
「問い」を立て、それに対する「正解」を見いだすという仕事は、他の職種においてもますます重要になってくる。
例えば人事労務の担当者であれば、社員の離職率が上がっている原因はどこにあるのか、「採用方法か」「人事制度か」「マネジャーの力量か」などさまざまな問いを立て、施策を考えること。カスタマーサービスの担当者であれば、顧客の満足度を高めるためにテコ入れすべきは製品そのものか、売り方か、購入後のコミュニケーションか……などの問いを立て、問い合わせやクレームを分析し、会社が次に取るべきアクションを提案すること。こういった、「自分たちは何をすべきか」から模索するようなことが、AIに代替されず、必要とされる仕事となるだろう。
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