経営者「出社回帰で生産性向上!」社員「むしろ逆!」──この深刻なギャップはなぜ生まれるのか:リモートワーク成功“3つの要素”(1/3 ページ)
“出社回帰”に動く企業が増えている。「出社回帰」させたい企業と、リモートワークの権利を手放したくない社員。両者のすれ違いはなぜ起きるのか。
コロナ禍で開始あるいは拡大したリモートワークを縮小し、“出社回帰”に動く企業が増えている。「原則“フル出社”の方針でリモートワークができなくなった」「フルリモート可だったのに、一定の出社が必要になった」などでライフスタイルの変更を迫られ、退職を決意したという話も見聞きする。
退職までいかずとも、以前よりリモートワークがしにくくなり、不満をもっている会社員は少なくない。しかし多くの会社は、「社員に辞めてほしいわけではない。働きやすさも大事だと考えている。でも、もう少し会社に来てほしい」というのが本音だろう。
「出社回帰」させたい企業と、リモートワークの権利を手放したくない社員。両者のすれ違いはなぜ起きるのか。一致させるにはどんな方策があるのかを考えてみよう。
相次ぐ「出社回帰」──リモートワークは“オワコン”か
「うちは、あくまで一時的な対応としてリモートワークを導入しただけ。コロナ前の働き方に戻るだけでしょ」と考えている経営者もいるかもしれない。ところが、一度リモートワークを経験した社員の側は、その権利が縮小されることに理不尽さを感じる可能性が高い。
ITエンジニアを対象としたレバテックの調査では、リモートワークによって業務の生産性が「大幅に向上すると思う」(17.9%)、「やや向上すると思う」(33.2%)との回答が合わせて5割を超えた。企業を対象とした調査では、リモートワークの導入によってITエンジニアのエンゲージメントが「大幅に向上した」(14.8%)、「やや向上した」(55.5%)とする回答が、合わせて約7割に上る。
生産性もエンゲージメントも向上するはずのリモートワークを縮小するなんて、社員にしてみれば納得しがたいものがあるだろう。それでも「出社回帰」を図る企業が多いのはなぜなのか。筆者は、2つの理由があると見ている。
「どちらが生産性が高いか」の議論がかみ合わないワケ
1つは、経営者や管理職の視点では、社員を出社させた方が生産性が上がるからだ。
これは、「リモートワークで生産性が上がる」という社員の主張が間違っているという意味ではない。両者で生産性を測る対象が異なっているから、議論がかみ合わないのだ。
管理職ではない社員は、自分の仕事がいかに効率的に進むかで生産性の高低を語る。先の調査で「リモートワークで生産性が向上する」としたITエンジニアも、通勤で疲れない、自宅の方が邪魔が入ったり気を使うことが少ない、だから集中できると、あくまで個人の仕事の効率を念頭に回答しているのだと思われる。
しかし経営者や管理職の立場では、会社全体やチームの業績がどれだけ上がるかで生産性を測ることになる。そうなると、どこかでトラブルやボトルネックが生じたらすぐに気付いてフォローできるよう、なるべく出社させた方が良いという判断もあり得る。まだ未熟な若手を育成するために、先輩や上司が手本を見せたり側で見守ったりできる体制が必要になることもある。
また、決められた計画や目標をクリアするだけでなく、新たなイノベーションを起こそうとするには、各自がリモートで淡々と仕事をこなすというやり方はそぐわない。それぞれが積極的に社外に出て情報を集めたり、それを持ち寄ってディスカッションしたりする拠点として、オフィスを有効活用してほしいという考え方もあるだろう。
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