この10月、厚労省の「新しい時代の働き方に関する研究会」が報告書を公表した。
研究会の目的は「働き方や職業キャリアに関するニーズ等を把握しつつ、新しい時代を見据えた労働基準関係法制度の課題を整理すること」で、有識者らによる15回の会議を重ねた結果をまとめたのが、今回の報告書だ。
厚労省はこれを受け、年度内に法律の学識者らによる研究会を発足し、本格的な法改正の議論に入る見込みだ。
厚労省が目指している「労基法の改正」が実行されたら、会社と従業員にどれほどの影響が出るのだろうか……。
なぜ今「労基法」の改正を検討?
報告書ではまず、近年の「企業を取り巻く環境」「労働市場」「働く人の意識」の変化を端的にまとめている。そこで語られるのは、企業は予測不可能な、いわゆるVUCAな環境下にあり、人手不足が深刻で、働く個人の仕事感や生活スタイルが多様化している……といった周知の内容だ。
このような変化の結果、労働基準法をはじめとする現行の労働法では対応しづらい部分、足りない部分が出てきている。それが働く人の能力の発揮、ひいては国の発展を妨げないよう見直しが必要だという認識が、この研究会の出発点にある。
というのも、労働基準法は明治期の鉱業法や工場法を前身とし、労働条件の最低基準を設定するものとして1947年に制定された。これは戦前の封建的な労使関係を一掃し、労働者の権利を保証するのに役立った。しかし、同じ時間・場所で使用者の指揮命令によって画一的に働く集団を想定していること、物理的な「事業場」が規制の単位となっていることなどが、現代の働き方にそぐわなくなっている――というのが報告書の主張だ。
例えばリモートワークやフレックス勤務などは、もともとの労働基準法においては想定がなかった。条文は少しずつ改定されているものの、「同じ時間・場所で使用者の指揮命令によって働く」というベースの考え方と現実の働き方がずれており、リモートの場合の労働時間管理、安全衛生や作業環境の整備やそのための費用をどうするかなど、難しい問題は多い。
また、フリーランスや個人事業主は労働基準法の対象外とされがちだが、実態は従業員としての働き方に近い人たちも多い。そういうことも念頭に、労働法の見直しが必要だとしている。
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