2つの重要なコンセプト 「守る」と「支える」とは?
労働法を見直すにあたって重要な視点として、報告書では「守る」と「支える」の2つを掲げている。
「守る」という視点の先にあるのは、労働者の健康だ。
まず、「全ての働く人が心身の健康を維持しつつ幸せに働き続ける社会の実現」という大きな目標がある。それには、労働者の権利を保証するべく従来の労働基準法制の基本原則などを「守る」ことが大前提。その上で、労働者の心身の健康をしっかりと「守る」制度設計の検討を、という論理を展開する。
「支える」という視点の根底には、「人は、より良い職業生活を送り、人生を豊かにすることを目指して日々働いている」という仕事観がある。その上で、働く人が自己の成長やキャリアを実現するための働き方の希望をかなえ、より良い職業生活を送ることを「支える」ことができる制度を、という主張がなされている。
筆者の理解では、従来の労働法はマズローの欲求5段階説でいうところの最も低次の欲求である「生理的欲求」や、その次の「安全欲求」を満たすのに必要な決めごとだ。「守る」というコンセプトも、そのような意味で提示されている。
一方、「支える」というコンセプトで言及しているのは、より高次の欲求、特に「承認欲求」や「自己実現欲求」に当たる領域だ。これらの観点をどこまで法制度に落とし込んでいくのか、要注目である。
法律の解釈次第で「守る」がおろそかになることはあってはならないし、ルールを作ることで逆に労働者の選択を妨げたり、時代の変化に対応しづらくなることのないように注意が必要だろう。
関連記事
- 「休めない日本人」がこれほどまでに多いワケ
- 日本から「転勤」がなくなるかもしれない、これだけの理由
日本から「転勤」がなくなる日は来るのだろうか――。手当を増やすことでなんとか転勤を受け入れてもらおうとする企業がある一方で、転勤制度を極力なくしていこうという企業も出てきている。日本に特有と言われる転勤制度は、これからどうなるのだろうか……? - 「週休3日制」が日本でこれほどまでに根付かないワケ
- 「管理職になりたくない」 優秀な社員が昇進を拒むワケ
昨今は「出世しなくてもよい」と考えるビジネスパーソンが増えている。若年層に管理職を打診しても断られるケースが見受けられ、企業によっては後任者を据えるのに苦労することも。なぜ、優秀な社員は昇進を拒むのか……。 - 「ホワイトすぎて」退職って本当? 変化する若者の仕事観
「ホワイト離職」現象が、メディアで取り沙汰されている。いやいや、「ホワイトすぎて」退職って本当? 変化する若者の仕事観を考える。 - 時短勤務や週休3日が「働く母」を苦しめるワケ 働き方改革の隠れた代償
男性育休の促進、時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制といった従来の制度をより使いやすくする動きが進んでいる。子育てをしながら働き続けるためのオプションが増えるのは良いことだ。しかし一方で、「これだけの制度があるんだもの、仕事も子育ても頑張れるでしょ?」という圧力に、ますますしんどくなる女性が増えてしまう可能性も。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.