日本から「転勤」がなくなるかもしれない、これだけの理由:「転勤拒否族」は甘え?(1/3 ページ)
日本から「転勤」がなくなる日は来るのだろうか――。手当を増やすことでなんとか転勤を受け入れてもらおうとする企業がある一方で、転勤制度を極力なくしていこうという企業も出てきている。日本に特有と言われる転勤制度は、これからどうなるのだろうか……?
日本から「転勤」がなくなる日は来るのだろうか――。
「転居を伴う転勤をする職員に一律50万円を支給」――これは、三菱UFJ信託銀行が10月に導入した新たな制度だ。みずほフィナンシャルグループも、転勤する社員への一時金の増額を発表した。来年4月から、家族を伴う場合は従来の15万円から30万円へと倍増。単身赴任は8万円から24万円へと3倍になり、独身者でも8万円から15万円に引き上げるという。
日本企業の中でも金融機関は特に転勤が多い。職員はそれを分かって就職したはずだが、手当を大幅に引き上げないと転勤を受け入れない者が増えていく――。両社のそんな危機感が見て取れる。
「マイナビ 2023年卒大学生就職意識調査」では「行きたくない会社」として26.6%が「転勤の多い会社」を挙げるなど、就職・転職においても転勤のある会社を避ける傾向が見えてきている。
しかし、現状は「転勤を拒否するなんてけしからん」「私たちの時代は、転勤を繰り返すことで、出世できたんだ」なんて声が上がることも多い。
日本に特有と言われる転勤制度は、これからどうなるのだろうか……?
本当に「転勤」は必要か 企業が語る4つの必要性
手当を増やすことでなんとか転勤を受け入れてもらおうとする企業がある一方で、転勤制度を極力なくしていこうという企業も出てきている。
AIG損害保険を始めとするAIGグループは2019年4月、会社都合の転居を伴う転勤制度を廃止した。「Work @ Homebase」という制度を導入し、特定のエリアで働き続ける「ノンモバイル社員」とキャリアアップを重視してさまざまなエリアで働く「モバイル社員」のどちらかを選択できるようにしている。ノンモバイル社員を選んでも報酬が下がらないこと、モバイル社員であっても希望のエリア外に転勤する場合は、家賃補助に加えて別途手当が付与されることが特徴だ。
小売店や飲食業などでも、勤務エリア限定の正社員制度の導入が増えている。また、コロナ禍でリモートワークの仕組みが整ったことで転勤制度を見直す機運も出てきた。
富士通は20年、単身赴任の解消と遠隔勤務の推進を開始。その後1年で単身赴任を解消した社員941人を含む約1400人が、遠隔勤務を実現したという(参照『ニューノーマル時代の「新しい働き方」 「Work」と「Life」のシナジーを追求する』)。NTTグループも22年に全国どこに住んでも働ける制度を導入し、転勤や単身赴任を伴わない働き方を拡大していくことを発表した。
しかし、こういった動きに追随する企業はまだ少ない。転勤という長年の慣行を廃止して新たな人事制度を作り上げるのが大変、ということもあるだろう。しかしそれ以上に、以下のような理由で転勤の必要性を信じて疑わない会社が多いのではないかと思われる。
(1)転勤は、人材育成のために必要
(2)転勤は、不正や癒着防止のために必要
(3)転勤は、終身雇用制度を維持するために必要
(4)転勤は、事業拡大、新規拠点立ち上げのために必要
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