賃上げが伸び悩む一方で進む物価高 企業が「値上げ」で注意すべきこととは?(3/3 ページ)
実質賃金がなかなか伸び悩む中で、企業は値上げを敢行する必要がある。その際、注意すべきこととは?
値上げする際に注意すべきこととは?
これは逆も然りで、前述のすき家のように値下げをした場合は、その分だけ客数を多く達成する必要があります。また、値上げで離反した顧客を再度呼び戻すのがどれくらい難しいかは、なかなか数値では測れません。これは商品や値上げ幅によっても異なり、顧客心理の中に答えがあるので、定量的には測りづらい課題です。
しかしこの点を見誤らず、さまざまな検証を行っていかなくては、値上げして離反した顧客を戻すためのコストの方が大きくなりかねません。避けなくてはいけないのは商品価値・特典や利用シーンの利便性も変動なく値上げだけを断行することです。昨今の市況の中では大きな危険をはらんでいます。
「あの大手企業がまさかの大幅な赤字業績」というニュースを今後も目にするかもしれませんが、その際には値上げがトリガーになっていないかを注視する必要があるでしょう。値上げせざるを得ない、しかしどうにかそこに一工夫を加えて、顧客支持と自社の利益のバランスを吟味しなくては、利益確保のために値上げをしたのに、それがきっかけで利益が大幅減となりかねず本末転倒です。
実質賃金が安定的な上昇気流に乗るまでは、顧客離反をするリスクを常に念頭に置いて決断をする必要があることを忘れてはなりません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
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