リーダーの思考をAI化、社員の相談相手に DeNA子会社ら、26年春から提供開始
ディー・エヌ・エーの子会社であるDeNA AI Link(東京都渋谷区)が、AIサービス「AI社長」を提供するTHA(東京都新宿区)と共同で、エンタープライズ向けAIサービス「リーダーズAI」の開発・提供に着手すると発表。経営層や事業リーダー、部門リーダーなどの思考をAI化し、業務で活用するサービスだ。
多くの企業が生成AIの導入を進める中、出力される回答が「自社の文脈に合わない」「平準化された回答になりがちで実務利用に試行錯誤が必要」という課題が顕在化している。AIが組織の生産性を高めるには、単なる情報検索や文章生成を超え、「自社の戦略や文化背景を踏まえた判断」「自社ならではの視点」が不可欠だ。
こうした中、ディー・エヌ・エーの子会社であるDeNA AI Link(東京都渋谷区、以下DAL)が、AIサービス「AI社長」を提供するTHA(東京都新宿区)と共同で、エンタープライズ向けAIサービス「リーダーズAI」の開発・提供に着手すると発表。経営層や事業リーダー、部門リーダーなどの思考をAI化し、業務で活用するサービスだ。2026年春からの提供開始を予定している。
理想のAIリーダー どう開発する?
リーダーのAIは企業理念・IR情報・組織文化などの全社レベルの情報、部門ごとに蓄積された戦略やマニュアル、リーダー本人へのインタビューから構築。導入後、社員は日常的に使用するビジネスチャットツールから、いつでもリーダーのAIに相談できる。
リーダーのAIは企業の価値観やビジョン・ミッション、そのリーダーならではの視点に基づき、具体的なアドバイスや判断の軸、思考を深めるための問いかけを返す。社員はAIと対話しながら仕事を進めることで、より精度の高い企画立案や迅速な問題解決が可能となるという。
DALの代表取締役・住吉政一郎氏は「海外出張が多い中で時差もあり、メンバーが相談したいタイミングでなかなか話せないという課題があった」と振り返る。住吉氏の思考や判断基準をもとに構築した「AI住吉」は当初、AI事業に直接関わるメンバー向けに導入した。現在では社内のAIビジネス企画公募の壁打ち相手や、HR部門が採用候補者を見極める際に利用するなど、さまざまな使われ方をしているという。
住吉氏は「日本の大手企業が時間や場所の制約を超え、リーダーの知見を組織全体で活用できる。そんな未来を実現していきたい」とコメントした。
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