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製薬DXはなぜ難しい? 第一三共が突破した「組織・人材・規制」3つの壁「DX銘柄」3年連続選出(1/5 ページ)

第一三共は2025年4月、経済産業省などによる「DX銘柄2025」に3年連続で選定された。DX企画部部長の上野哲広氏と、同部全社変革推進グループ長の公文道子氏に、具体的な取り組みを聞いた。

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 多くの企業がDX推進に取り組む中、「経営層の理解は得られたが現場が動かない」「部分最適にとどまり全社変革に至らない」といった声は後を絶たない。特に製薬業界においては、特有の厳格な品質基準や規制対応という制約下で、真の全社変革を実現するのは容易ではない。

 こうした困難な環境にありながら、第一三共は2025年4月、経済産業省などによる「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2025」に3年連続で選定された。同社が実現した成果の背景には、全従業員対象のデジタル人材育成の体制づくりと、製薬業界特有の課題を克服するグローバル組織体制の構築があった。DX企画部部長の上野哲広氏と、同部全社変革推進グループ長の公文道子氏に、具体的な取り組みを聞いた。

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左:DX企画部部長の上野哲広氏、右:DX企画部全社変革推進グループ長の公文道子氏(編集部撮影)

第一三共が全社DXを推進できるワケ

 DX銘柄選定において、第一三共はどのような点が評価されたと捉えているのだろうか。上野氏は「委員会からのフィードバックを分析すると、大きく基盤と価値創出の2つに分類できます」と説明する。

 まず、基盤面では次の3点が評価された。「1つ目は、CDXOを中心とした明確な組織体制です。2つ目が、全社規模でDXを推進するための土台となる、DX人材育成プログラムを充実させたこと。3つ目が、データ分析基盤やセキュリティを含むITインフラの整備です」(上野氏)

 価値創出の面でも、3つの具体的な成果が認められた。「まず、創薬から安全性モニタリングまでといった幅広い領域において、生成AIやRPAを活用した業務効率化です。次に、医療ビッグデータを活用した既存事業の深化。そして、『Healthcare as a Service構想』というデジタルを使った新たな価値創出への挑戦です」(上野氏)

 DX銘柄に3年連続選定されたことは、社内にも大きな影響をもたらしている。「一番喜んでいるのはDX・IT部門のメンバーです」と上野氏。同社では2016年頃からがん領域への事業転換を進め、2020年のDX推進組織立ち上げ以降、グローバル化と新しい研究開発プロセスの構築を並行して進めてきた。その間、社員は忙しい数年を過ごしてきたが、外部からの評価を得たことで、取り組みへの手応えを感じているという。

 また、採用の面でも成果が表れているそうだ。上野氏によると、キャリア採用で入社を決めた社員の多くが、DX銘柄選定企業であることを判断材料にしているという。優秀な人材確保における、実質的なメリットも生まれている。

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