約7割のパン屋が黒字に コメの価格高騰で需要増、倒産は前年から4割減
パン屋の倒産が大幅に減少している。帝国データバンクの調査では1月〜10月に負債1000万円以上で法的整理により倒産したパン屋は、全国で15件。2024年は過去2番目に多い26件を記録していたが、そこから4割減となり4年ぶりに前年を下回る見込みとなった。
パン屋の倒産が大幅に減少している。帝国データバンクの調査によると、1月〜10月に負債1000万円以上で法的整理により倒産したパン屋は、全国で15件。2024年は過去2番目に多い26件を記録していたが、そこから4割減となり4年ぶりに前年を下回る見込みとなった。
需要シフトを見据えた戦略が業績改善を後押し
パン屋の経営は、「高級食パン」ブームの終焉(しゅうえん)や、小麦、油脂や砂糖、卵などの原材料、ビニールなど包装資材の仕入価格の高騰、店舗スタッフの人件費やエネルギーコストの上昇などにより、厳しい状況が続いている。
一方で、都市部や観光地においてはインバウンド需要による好調や、SNS活用による発信機会の増加などにより、後発のパン屋でもリピーター集客を伸ばすことが可能になった。
さらに、コメの価格高騰による主食の代替手段としてパンの需要の高まりも好機となった。総務省「小売物価統計調査」および2人以上の世帯の「家計調査」を基にした推計では、2025年における2人世帯以上のパン消費額は1日当たり換算で114円となり、コロナ前に比べて約1割増加。パン食機会の増加が見て取れる。
パン屋経営企業の業績動向をみると、2024年度は4割を超えるパン屋が最終利益で増益、7割近いパン屋が「黒字」を確保。黒字割合は約7割と、2016年度(70.7%)以来の高水準となった。
帝国データバンクによるとコメ高騰による需要シフトを意識して、主食となるパンは手ごろな価格を維持しつつ、国産原料やストーリー性にこだわったパンは付加価値を最大限に訴求した値付けにするなど、価格設定を見直すことで利益改善につなげたケースも多くあり、これらの試みも業績改善に影響していると考えられる。
ほかにも、イートイン需要を取り込み「ベーカリーカフェ」として客単価と滞在時間を向上させる経営戦略や、「地域密着型」「特定のコンセプトに特化したニッチ店」など、ニーズに応じた業態の多様化も進んでいる。
「厳しいコスト環境とコメ高騰という外部環境を『需要取り込みの機会』として捉え、コスト高に対応可能な価格設定と付加価値訴求の両輪で乗り越えることができるかどうかが問われる」と帝国データバンクはコメントした。
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