Netflixで話題沸騰『イクサガミ』 世界1位の大ヒットになったワケ(3/4 ページ)
Netflixで放送されている『イクサガミ』が世界1位の大ヒットを記録した。時代劇という特殊な設定にもかかわらず、なぜ世界中で話題になったのか?
「画面が暗い」 それでも、マイナスにならない訳
また、そんな岡田さんから指名を受けメガホンを取ったのが『正体』『新聞記者』などの藤井道人監督だ。手掛ける作品の幅が広い藤井監督だが、特に『ヤクザと家族 The Family』『ヴィレッジ』『最後まで行く』などで垣間見えたような、スリリングでダークな映像美が『イクサガミ』でも光っている。
例えば、物語の序盤は、時代設定も相まって薄暗い場面が続く。中には目をこらすほど視認性が低く思えるシーンもあるが、そのような徹底された画作りが、時代劇としての独特のリアリティにつながっている。
そんな映像を観ていて思い出すのは、『今際の国のアリス』の佐藤信介監督が作品制作時を振り返って語ったこのような発言だ(参照:AV Watch「『地面師たち』監督らが振り返るNetflixでの挑戦。山田孝之はギャラアップを直談判」)。
「なんとなく(従来の作品で)あったのは、『なるべく画面は明るめにして分かりやすくしよう』ということをプロデューサーからよく言われていましたが、(Netflixでは)逆に『画面はダークにして、ちょっと分かりにくくてもいいからルック・トーンを上質にしたい』と言われます。僕たちは、つねづねそうしたいと思っていたので、話しやすい人が映画・ドラマづくりを始めてくれたなと感じましたね」
『イクサガミ』でも恐らく、同様のやり取りが交わされた上での判断なのではないだろうか。そのように、ある種のリスクを取ってでも作品のクオリティを追求するという選択の一つ一つが、本作のクリエイティブを支え、異例のヒットにまでつながっている。
著者紹介:白川穂先
エンタメ企業と編集プロダクションで編集・取材・執筆を経験し、個人で執筆活動。ドラマ、映画、アニメなどエンタメ記事の企画・執筆を幅広く行っている。1994年生まれ、北海道出身。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
なか卯の「床に置かれた食器」問題 企業の沈黙が呼ぶ“将来の波紋”
10月下旬、なか卯での「床に置かれた食器」の写真がSNSで拡散された。その後のなか卯の対応が適切だったようには感じない。では、どのような対応が求められるのか?
ユニクロのセルフレジ、なぜあれほど「快適」なのか? 「徹底的な分かりやすさ」はこう作られている
セルフレジやセミセルフレジが「分かりにくい」と話題になる一方、ユニクロのセルフレジはなぜ、あんなにも使いやすいのか? 誰でも迷わず簡単に使える「徹底的な分かりやすさ」はどう作られているのだろうか。
「落とし物DX」で売上15億円 競合だったJR東日本も導入した「find」はどんなサービスなのか
落とし物は誰にとっても身近なトラブルだが、その回収はアナログで非効率なままだった。そんな市場を15億円規模に成長させた「find」とはどんなサービスなのかというと……。
セブン、店内“スチーム”調理の「できたてラーメン」 600円前後で発売、勝機は?
セブン‐イレブン・ジャパンは店内で調理する「できたてラーメン」を発表した。600円前後という価格設定についてや、既存商品とのカニバリについてはどのように考えているのか?
ANAのクッション、1万5000円もするのになぜ反響? 17時間で完売した商品を再販
ANAホールディングスは11月5日、1万5000円もするクッションを再販した。前回17時間で完売したことに加え、再販要望が多く寄せられたからだというが、どのような特徴があるのか?
