「訪問介護事業者」の倒産、3年連続で過去最多 賃上げ伸び悩み、コスト増が経営圧迫
「訪問介護事業者」の倒産は3年連続で年間最多を更新した。小・零細規模の事業者の倒産が目立ったものの、徐々に中規模事業者にも倒産が広がっている。
東京商工リサーチが行った1〜11月における「訪問介護事業者」の倒産動向調査によると、倒産件数は85件に達し、これまで最多だった2023年(67件)、2024年(81件)を既に超え、3年連続で年間最多を更新したことが分かった。ヘルパー不足や介護報酬の引き下げ、人件費やガソリン代など運営コストの上昇が重なり、倒産に追い込まれる事業者が増えている。
原因別では、大手との競争やヘルパー不足による利用者減少、介護報酬のマイナス改定などによる「売上不振」が71件(構成比83.5%)と大半を占めた。事業規模を見ると「従業員10人未満」が74件(同87.0%)、負債額別では「1億円未満」が76件(同89.4%)と、小規模・零細事業者の倒産が目立った。一方で負債「1億円以上」も9件(同10.5%)発生し、中規模事業者にも倒産が広がりつつある。
地区別では「近畿」が27件(同31.7%)で最多となり、以降は「関東」の22件(同25.8%)、「中部」の11件(同12.9%)、「九州」の9件(同10.5%)が続いた。都道府県別では「大阪府」の12件が最多で「東京都」の10件、「北海道」の8件、「神奈川県」「愛知県」のそれぞれ6件が続いた。
政府が11月に発表した「医療・介護等支援パッケージ」では、介護分野の職員の処遇改善として「他職種と遜色のない処遇改善に向けて、令和8年度介護報酬改定で必要な対応を行う」と明記した。また、報酬改定を待たず人材流出を防ぐため、賃上げや職場環境改善の緊急支援を行うとしている。
ただし、コロナ禍の支援効果が薄れた2023年以降、「訪問介護事業者」の倒産増加ペースは他の介護事業と比べても際立って高い。コロナ禍前から続くヘルパー不足が依然として深刻な上、燃料費や介護用品の高止まりも経営を圧迫している。全国老人保健施設協会など介護13団体の調査では、2025年度の賃上げ率は2.58%にとどまり、全産業平均(5.25%)の半分だった。「人件費の伸び率鈍化が人手不足を生む悪循環に陥っている」と東京商工リサーチは分析している。
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