「人も捨て場も足りない」 解体工事業の倒産、過去最多ペース:東京商工リサーチが調査
各地で再開発が進む一方、解体工事の現場が揺らいでいる。東京商工リサーチによると、1〜10月に発生した解体工事業の倒産は53件に達し、過去20年間で最多ペースとなった。
各地で再開発が進む一方、解体工事の現場が揺らいでいる。東京商工リサーチによると、1〜10月に発生した解体工事業の倒産は53件に達し、過去20年間で最多ペースとなった。前年同期比では20.4%増加しており、このまま推移すれば、年間最多だった2024年(59件)を上回る可能性が高い。
中小・零細業者を直撃する二重苦
原因別では「受注不振」(販売不振)が36件と全体の約7割(67.9%)を占めた。資本金別では個人企業を含む1000万円未満が41件と約8割に上る。負債額も1億円未満が66.0%を占めており、資金力に乏しい小規模事業者ほど厳しい状況に置かれている実態が浮き彫りになった。地域別では、関東が26件、近畿が11件と、この2地域で約7割を占めた。
背景にあるのが、止まらない人件費の高騰だ。国土交通省が公表した「公共工事設計労務単価」(2025年3月適用)によると、全国平均の人件費は2万4852円と、前年から6.0%上昇した。引き上げは13年連続となり、資材価格の高騰や慢性的な人手不足も相まって、労務費は高止まりしている。
さらに、解体工事で発生するコンクリート片などの廃材処理も深刻だ。都市部では処理施設の確保が難しく、遠方への運搬を余儀なくされるケースも少なくない。輸送距離の増加は人件費や燃料費の上昇を招き、処理が滞れば工事そのものが止まるリスクもあるという。
建設需要が堅調に推移する一方で、その土台を支える解体工事業界では疲弊が進んでいる。東京商工リサーチは「再開発の陰で進む中小・零細業者の苦境は、今後の建設業全体の持続性にも影を落としかねない」と指摘した。
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