仕様書だけが降ってきた――「自治体システム標準化」で現場の混乱を招いた“完成図なき改革”(6/6 ページ)
「自治体システム標準化」と「ガバメントクラウド移行」を巡り、自治体の現場では人手不足、想定外のコスト増、移行遅延、責任の所在の不明確さ――といった深刻な混乱が広がっている。CIO補佐官として、現場で取り組みに関わってきた筆者が「マネジメントの視点」から事業について考える。
政府主導に「歯止め」かけられなかった自治体側の責任も
一方、自治体側にも全く落ち度がなかったとはいえません。
全国約1700の自治体は、その規模や財政力、組織の能力・体力などが千差万別です。むしろ十分なリソースやスキルが備わっていない自治体が多数派だったことも想像に難くありません。もし政府が注視していたのがこうした「弱い自治体」であったなら、従来の自治体の課題を改めさせるには、「何も考えず政府の指示に従えばいい」という手法こそが効率的だと捉えていたのかもしれません。
結果として、政府主導の進め方に十分な歯止めをかけられなかった側面は、力不足の自治体側にもあったといえるでしょう。
ここまでの一連の取り組みにより、わが国は多くの労力と予算を無駄に費やす結果となりました。財政や社会インフラに与えた影響は甚大であり、そのツケは今後も長期にわたって返済していく必要があるでしょう。本来であれば、この失敗を教訓として「次」へと進みたいところですが、現時点ではまだ「今」の課題が解決されていません。自治体としては、まず生き残ることを最優先にしていくしかなさそうです。
さて、前回と今回の記事を通して「政府」という言葉を意図的に使ってきましたが、本来、政府には多くの省庁があり、さまざまな立場の関係者がいます。その中には、私たちのために誠実に尽力してくださっている方も大勢います。ひとまとめに「政府」として断じるのは適切ではなく、この状況を招いたのは、あくまで一部の関係者なのかもしれません。
筆者としては、少なくとも今後訪れるであろう困難な時代を、当事者としてしっかりと受け止めていただきたいと思います。そして、もし次の機会があるならば、どうか同じ関係者が再び主導権を握ることがないよう、心から願っています。
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