「ランチ難民」を取り込め 新宿中村屋の「置き型社食」が、カレーではなく「スープ」で勝負するワケ
レストラン・新宿中村屋や食品販売を手掛ける中村屋(東京都新宿区)は出社回帰をビジネスチャンスと捉え、新事業を立ち上げた。置き型社食サービス「OFFICE Stand BY You」だ。
出社回帰が進む中で、「ランチ難民」が急増している。
レストラン・新宿中村屋や食品販売を手掛ける中村屋(東京都新宿区)は、こうした変化をビジネスチャンスと捉え、新事業を立ち上げた。置き型社食サービス「OFFICE Stand BY You」だ。
「人口減少による売り上げ減少は避けられない。だが、切り口を変えれば成長余地がある領域はまだあると考えた」──文化・事業創造室の石原広大課長は、新事業への期待をこう語る。
置き型社食サービスで販売するのは「スープ」だ。カレーや中華まんを定番商品に持つ同社は、なぜ「スープ」を選んだのか。そこには、ビジネスパーソンを観察して見えてきた“勝ち筋”があった。
カレーの新宿中村屋がなぜスープ?
OFFICE Stand BY Youで扱う商品はクラムチャウダーやミネストローネ、ボルシチなど6種類(12月時点)のスープで、最低納品数は64個。専用カップやスプーンも併せて提供する。QRコードのキャッシュレス決済を採用し、利用者は商品を選び、レンジで90秒温めれば、すぐスープが食べられる。
置き型社食サービスは冷蔵や冷凍の商品が多いが、OFFICE Stand BY Youは常温で保存が可能。そのため専用の冷蔵庫を設置するといったコストが不要だ。災害時の備蓄としての活用も見込んでいるという。
同社にはカレーや肉まんといった人気の定番商品も多い。知名度も高いそれらの商品ではなくスープにしたのはなぜか。
「さまざまな商品を用意しテスト販売を行う中で、スープだけが異様に売れた。昼時のオフィスを観察していると、カップスープを食べているビジネスパーソンが多いことに気付いた。お弁当やおにぎり、パンに『プラス一品』することを考えるとスープが選ばれやすいと判断した」(石原氏)。また、同社は1995年からレトルト食品も手掛けており、その技術を活用できる側面もあった。
スープの開発には、レストランで20年ほど経験を積んだシェフ・金谷将史氏(食品開発部)が担当。「レストランの味をオフィスへ」をコンセプトに素材本来の味を引き出すことにこだわり、約半年かけて開発した。今後は季節商品や和風スープなど、ラインアップ拡充も検討しているという。
11月からスタートしたOFFICE Stand BY Youは、現在約10社が導入。他にも数社がトライアル中だ。「長期的には、数十億円規模を売り上げる事業に成長させたい」と石原氏は意気込んだ。
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