スマホはディズニーの”魔法”を壊すのか? 没入感を生むUXと削るUX:グッドパッチとUXの話をしようか(4/4 ページ)
「ゲストがスマホの画面を見るたびに、パークの魔法が壊れてしまう」――ディズニーが効率化を図って導入した公式アプリがもたらした弊害だ。一方、このテクノロジーによって新たに生み出された魔法も存在する。アプリによってゲストの体験はどう変わったのか?
ディズニーに学ぶ、サービス設計の3つの問い
ここまで見てきたことは、そのまま他のサービスやプロダクトにも当てはまります。例えば、ディズニーの事例から引き出せる問いを、3つに整理してみます。
1. 「最大限の価値」を、勝手に1つに決めつけていないか?
「この機能を一番使いこなせる人」が前提になっていたり、「ヘビーユーザーの理想形」だけを基準にしていないでしょうか。ユーザーによって「最大限」の定義は異なります。
ディズニーでいう「アトラクション数」「子どもの機嫌」「雰囲気や思い出」のように、自社のサービスでも「何を大事にする人がいるか」をあらためて棚卸ししてみる必要があるかもしれません。
2. 情報や機能の出し方が「情報疲れ」や「自己責任感」を生んでいないか?
アプリ上にたくさんの機能を搭載することが、必ずしもユーザー体験の向上につながるとは限りません。サービスの多機能化が進むことで、特定の機能が埋もれてしまい、熟練者しか見つけられない状態になっていないか。利便性向上のための機能がサービスを必要以上に複雑にしていないか。
ディズニーのように「攻略できる人」と「できない人」の差が、そのまま「楽しさの差」に見えてしまうと同様に、アプリを「使いこなせない自分が悪い」という自己責任感を強めてしまう可能性もあります。
3. デジタルとアナログ、どこを切り取っても“良い体験”を用意できているか?
アプリやWebのUIだけをアップデートして、オフラインの導線を置き去りにしていないでしょうか? 個人的には、日本はまだその逆で、アナログをベースとした体験施設のWebサイトやスマホアプリの作り込まれなさに愕然(がくぜん)とすることが多いのが正直なところです。
デジタルが苦手な人にも、アプリやスマホで効率的に情報を収集したい人にとっても「自分なりに最大限楽しめた」と思ってもらえる仕組みがあるでしょうか。
自社のサービスでも、Webと店舗、アプリとコールセンター、オンラインと営業現場といった複数の接点のどこを切り取ってもユーザーに最適な体験を提供できているかどうかが問われているのだと思います。
魔法を壊さない「テクノロジー」の使い方
東京ディズニーランド/シーは、テクノロジーを駆使した「巨大なサービス」として、これからも進化し続けるでしょう。スマホがその裏側を支える強力な道具であることは、きっと変わりません。ただ、その道具が前に出すぎると、「夢と魔法の国」本来の「魔法」を削ってしまうこともある――。
繰り返しになりますが、大事なのは一人ひとりの「最大限楽しみたい」という気持ちを尊重しながら、その人、そのシチュエーションに合った「ちょうどいい情報」と「ちょうどいいナビゲーション」を届けることです。
テーマパークに限らず、あらゆるサービスやプロダクトが、さらに多様化していく世の中と向き合いながら、UXデザインの本質であるこの考え方をどうソリューションに落とし込んでいくのか。その試行錯誤のプロセスを、これからも本連載を通じて、読者のみなさんと一緒に追いかけていきたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ユニクロのセルフレジ、なぜあれほど「快適」なのか? 「徹底的な分かりやすさ」はこう作られている
セルフレジやセミセルフレジが「分かりにくい」と話題になる一方、ユニクロのセルフレジはなぜ、あんなにも使いやすいのか? 誰でも迷わず簡単に使える「徹底的な分かりやすさ」はどう作られているのだろうか。
スシローの注文用ディスプレイ「デジロー」は何がすごい? 大画面に盛り込まれた数々の仕掛け
スシローの店舗で続々導入されている、注文用の大型ディスプレイ「デジロー」。大画面で注文しやすくなったのは言わずもがな、ユーザー体験を上げる細かい仕掛けの数々を見ていきましょう。
入場料2530円の本屋が話題 「本を買う」だけでない、一風変わった本屋の「納得の体験価値」
書店が減っている中で、一風変わった本屋の人気が高まっている。「入場料を取る本屋」に「席料が安くなるブックカフェ」など、本を買うだけでない、新しい本屋の体験価値に迫る。
「パーソナライズ機能」は、なぜ魅力的? ナイキやびっくりドンキーなど多業界で広がる
さまざまなサービス、プロダクトが「パーソナライゼーション」されつつある。ナイキのシューズやびっくりドンキーの新業態でも広がっている。なぜ、人々はパーソナライゼーションに魅力を覚えるのか?
三日坊主にはなれない? Duolingoの「離脱ユーザー」を引き戻す画期的な仕組み
今年の抱負の常連でもある、語学学習ですが、三日坊主になってしまう人も多いのではないでしょうか。語学学習アプリ「Duolingo」はサービス内で、離脱ユーザーを引き戻す画期的な仕組みを整えています。どんな体験が待っているのかというと……
