「どれで払う?」は終わるのか PayPay×Visaが挑む“お金の出どころ”問題(2/4 ページ)
PayPayとVisaが導入する「Flexible Credential」。クレジット、残高、デビットを1枚に統合し、支払い元を切り替える構想だ。レジ前の迷いは消えるのか。その成否が問われている。
「人類には早すぎた」先行者
この発想を日本で最初に形にしたのが、三井住友フィナンシャルグループのOliveだった。2023年3月に始まった「フレキシブルペイ」は、1枚のカードにクレジット・デビット・ポイント払いの3つのモードを載せ、アプリで切り替えて使える仕組みだ。Visaによれば、利用者の約70%が資金源の切り替え機能を使っているという(参照リンク)。一定の需要はあった。
だが、現実の評価は割れた。「1枚でカバーできるから財布がスッキリした」「家計管理がしやすい」という声がある一方で、Xには「複雑怪奇は人類にはまだ早過ぎた」という投稿も見られた。Oliveを操作する三井住友銀行アプリのレビューを見ると、賛否がほぼ五分五分に分かれている。
問題の本質は「切り替えたはずなのに、思った通りにならない」ことにあった。iDで支払うと、モード設定に関係なくデビット扱いになる。ネット通販では、注文時ではなく商品出荷時のモードが適用され、数週間前にクレジットで買ったつもりの商品が、デビットとして口座から即時引き落とされる。
切り替えを忘れたまま残高不足でエラーが出て、レジで立ち往生する。アプリ上の「選択」と、決済ネットワーク側で行われる「処理」が食い違う場面があまりに多かった。
結局、ヘビーユーザーの間では「モードはクレジットに固定して触らないのが一番安全」という運用が広まった。切り替えられることが売りの機能を、切り替えずに使う。皮肉な結論だが、ここに教訓がある。支払いのたびに利用者が判断し、手動で切り替えるという設計そのものに無理があったのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
3万円払っても欲しい? ATMでは使えないのに人気沸騰のメタルカード
JCBが2024年10月に発行した招待制カード「ザ・クラス」が注目を集めている。ATMでは利用できず、発行手数料も3万3000円と高額。それでも発行後わずか2カ月で想定を上回る申し込みがあるという。
たった一日で43兆円が消えた日 Anthropic「Cowork」が揺るがしたSaaS神話
米AI企業Anthropicが発表した「Cowork」が市場を震かんさせた。AIがチャットを超え、業務を直接実行する存在へと進化。法務SaaSを直撃し、米国株で43兆円が消失。ソフトウェア産業の前提が揺らいでいる。
IT人材は東京のどこに住んでいる? 首都圏の“知られざるテックエリア”を地図で見る
首都圏に集中するIT人材の居住傾向を可視化。中野や下北沢、五反田など、意外な“隠れたテックエリア”の分布や、若手エンジニアが選ぶ街の特徴をデータで読み解く。
“お得自慢”がステータスになった? 100万人が選んだ「dカード PLATINUM」の裏側
プラチナカードの価値は「ステータス」から「お得さ」へ――。dカード PLATINUMが100万会員を突破した背景には、還元率を誇る価値観の変化があった。コンシェルジュを捨て、実利に振り切った設計思想を追う。
