「IT部門」を持たない中小企業が、AIで年間1368時間の業務削減を実現できたワケ(2/4 ページ)
社内には専門のIT部門もAIに詳しい人材もいない。そんな中小企業が1年でAIを活用し、10の事業部が多くの業務時間削減を実現した。中には年間1368時間を削減した事業部もある。どのような取り組みをしたのか?
AI活用プロジェクト、1368時間の業務削減 何をした?
AI活用プロジェクトは毎週金曜日に1時間行われた。前半20分は専門家がAIの最新情報を共有し、後半は各事業が取り組んでいるAI活用の進捗(しんちょく)確認や、課題に対するアドバイスや意見交換をするという構成だ。
「プロジェクト開始前にキックオフを実施し、そこで各事業部で実現したいAI活用の目標を設定しました。プロジェクトの期間は1年間だったので、3カ月、6カ月、12カ月で理想の進捗状況を設定し、振り返れるようにしました」
プロジェクトを通して、中村氏が所属する広報企画部は、年間1368時間の業務削減を実現した。どのように進めていったのか。
「私のプロジェクトのゴールは『全社の業務効率改善』でした。各事業部に『どういう業務を効率化したいか』『どういう業務が効率化されたら楽か』といったヒアリングを行い、現場の課題を集めました」
各事業部からさまざまな要望が寄せられたが、中でも多く挙げられたのが「Google Workspaceが提供するツールと、社内コミュニケーションツールであるChatWorkの連携」だ。
アイニコグループでは、事業部をまたいだ情報の受け渡しが頻繁に発生していた。例えば、A事業部がGoogle フォームで必要な情報の提供依頼を送り、その旨をChatWorkでB事業部に報告。ChatWork上で連絡を受け取ったB事業部がフォームを確認し、A事業部に必要情報を提供するという、フォームとChatWorkを行き来する無駄が発生していた。
そこで中村氏は「フォームに情報が記入された段階で、依頼先の事業部のChatWorkに自動で通知が届くようなシステムを組めないか」と考え、AIにどのような方法でどうやってシステムを組めばいいかについて相談した。
その結果、「Google Apps Script(GAS、Googleが提供する無料のローコード開発プラットフォーム)」の使用と、その使い方についての提案を受けた。指示された手順で実際にシステムを実装したところ、ChatWorkで個別に連絡しなくても自動で連絡が届くようになった。ChatWork上での確認依頼が不要になり、作業コスト削減につながった。
上記のように各事業部の困りごとを収集し、大まかな解決の方向性を考え、AIに実装方法を相談し、現場に導入していくのが広報企画部がAI推進プロジェクトで取り組んだことだ。その結果、全社で1368時間の業務削減につながった。
広報企画部ではシステム連携による効率化が取り組みの中心だったため、AIに疑問を打ち込めば比較的容易に答えにたどりつけるものも少なくなかった。一方、他事業では「この問題はAIで解決できるのか?」という点から考える必要があり、その検証にも時間を要していたという。
「課題の検証について、どこの事業部で具体的にこういった会話があったというのは細かく把握していないのですが、各事業部が挙げた課題に対して、AIの専門家から『その課題はAIでなくても解決できるかもしれない』というフィードバックがありました。AIの専門家だからこそ、AIにとらわれずに課題解決を目指すという考えが、今回の成果につながっていると思います」
中村氏はAI推進プロジェクトに参加した事業部の中でも、介護事業部の取り組みが印象的だったと振り返る。
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