2015年7月27日以前の記事
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“情弱ビジネス”とは言わせない チャージスポット運営のINFORICHが「市場価格の2倍」で買収へ……妥当性はどこにある?(2/4 ページ)

モバイルバッテリーのシェアリングサービス「チャージスポット」を展開するINFORICHが、米投資ファンドのベインキャピタルと共同で総額約500億円のMBO(経営陣による買収)を実施した。彼らがインフォリッチの価値を500億円と評価した勝算はどこにあるのだろうか。

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「不注意」をインフラに変える逆転の発想

 チャージスポットのビジネスを語る際、必ずと言っていいほど浮上するのが「買ったら1000円くらいの予備バッテリーを1時間で330円もかけて借りるのは愚かである」というものだ。

 しかし、この批判は現代人の消費行動に潜む「所有のコスト」を軽視している。

 モバイルバッテリーを所有することは、常にカバンを重くし、バッテリー自体の充電状態を管理し、自宅に長期保管することによる火災のリスクを負担し、さらには将来的な劣化や廃棄の手間(モバイルバッテリーは多くの自治体で家庭ごみとして捨ててはならない)を引き受けることを意味する。

 インフォリッチが提供しているのは、物理的な「モノ」だけではなく、これらを持ち運ぶわずらわしさから解放される「自由」と「保険」であるとみるべきだ。

 興味深いのは、このサービスが人間の不注意や衝動性を逆手に取っているというものである。確かに、外出前に充電を忘れ、予備のバッテリーをカバンに入れ忘れるという「失敗」が、同社の収益の源泉となっている。

 これを「搾取」と捉えるのは早計だろう。現代において、テクノロジーは人間の欠落を補完する役割を担っている。例えば、LUUPは「遅刻」を回避するための側面もあるだろうし、UberEatsだって「自分で作るか、自分で買いに行けばいい」話になってしまわないだろうか。

 そのような人間の不完全性を、街中に張り巡らされたインフラがカバーするという構造は、人が生活を営む上でのアクセシビリティー向上とみることもできる。

「不要」を「不可欠」に変えた

 インフォリッチが成功を収めたもう一つの要因は、既存の代替手段が抱えていた時間的・空間的制約を打ち破ったことにある。かつての充電ニーズは、カフェや飲食店のコンセントが担っていた。しかし、これらにはその場に拘束され、飲食代がかかるという欠点があった。

 移動しながら充電できるという体験は、タイムパフォーマンスを最優先事項とする現代のビジネスパーソンや若年層にとって、数百円のレンタル料を凌駕する価値を持つ。

 また、同社のスタンドは、一等地に設置されたデジタル広告媒体としても機能している。こうしたレンタル料だけに依存しない収益モデルを構築している点も、企業価値がプラスに評価される要因となった。

 さらに、同社は災害時インフラとしての顔も持ち合わせている点も見逃せない。

 停電時における情報端末の維持は、生命線そのものだ。チャージスポットは、自治体との連携や災害時の無料開放といった非常時の対応にも取り組んでいる。

 このように、チャージスポットのビジネスモデルはさまざまな要素がシナジー効果とともに働いており、結果として消費者の潜在意識に「バッテリーで困った時はチャージスポット」という強力なブランドロイヤルティーを刻み込んでいるのだ。

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