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なぜ1枚550円のシールが争奪戦に? ボンドロブームが示した「レアの正体」廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(3/3 ページ)

転売や価格高騰、窃盗事件にまで発展したボンボンドロップシール。この熱狂を支えている「レア」の正体を探っていく。

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レア失効の可能性も

 ボンボンドロップシールが特別視されるのも、この“欲望の集中”が起きているからにほかならない。だが、その集中が揺るぎないものかというと、そうではない。

 文脈的レアは市場で生成されると同時に、市場の動き次第で消滅するからだ。生産が追いつき、流通量が増え、誰でも容易に手に入る状態になれば、それはもはやレアではない。数量という物理的条件が変われば、希少性は失われる。


人気キャラのちいかわともコラボしている(画像:クーリア公式通販サイトより)

 さらに、レアが失効する理由はそれだけではない。仮に供給量が変わらなくても、人々の関心が別の対象へ移れば、その商品を求める人が減るためレアではなくなる。つまり、レアを規定しているのは供給だけではなく、需要、とりわけ人々の欲望の強度と持続力が要因なのだ。

 それゆえにレアとは物の本質ではない。公式が定めたレアであっても人気がなければ簡単に手に入ってしまうし、文脈的にそれがレアであると認識する人がいてもその母数が少なければ手に入ってしまう。コンテクストが共有され、欲望が集中し手に入れることが困難な状態がレアといえる。だからこそ、「いまはレア」であっても、それが永続する保証はない。

 ボンボンドロップシールの公式Xは先日、「品薄が続いておりご迷惑おかけしております。全種類の増産体制に入っております」と投稿した。供給が追い付けば、文脈的レアでなくなる可能性は高い。文脈的レアとは、欲望が集中している“現在”そのものなのだ。

著者紹介:廣瀬涼

1989年生まれ、静岡県出身。2019年、大学院博士課程在学中にニッセイ基礎研究所に研究員として入社。専門は現代消費文化論。「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上、彼らの消費欲求の源泉を研究。若者(Z世代)の消費文化についても講演や各種メディアで発表を行っている。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」、TBS「マツコの知らない世界」、TBS「新・情報7daysニュースキャスター」などで製作協力。本人は生粋のディズニーオタク。瀬の「頁」は正しくは「刀に貝」。

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