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「ラブブ」トレンドは長くは続かない? ジレンマを抱える人気キャラが「失った価値」廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(1/6 ページ)

一気に人気キャラの仲間入りを果たしたラブブだったが、そのトレンドはもしかしたら長くは続かないかもしれない……。なぜか?

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 先日電車で「ラブブってもう流行(はや)ってないよね」という言葉を耳にした。筆者は「分からなくもないなぁ」と思った。見方を変えれば、ラブブはいまだにトレンドの中心にあるようにも見えるし、同時に一部の層においてはすでにその熱が静かに冷めつつあるようにも思える。

 ラブブ(Labubu)は「THE MONSTERS」というシリーズの中のキャラクターの一つで、ウサギのような耳と鋭い歯を持つ小さな妖精だ。愛らしさと奇妙さを同居させたその造形は、従来の癒やし系キャラの系譜から少し外れたところに存在する。

 香港在住のアーティストKasing Lung氏がデザインしたキャラクターで、販売元は中国の玩具メーカー「POP MART」だ。ラブブは中国国内のみならずグローバルに拡散し、日本でも都市部を中心に販売されている。


大人気のラブブ。POP MARTでも在庫切れが続出している(画像:POP MART公式Webサイトより)

 ブームの発端は、韓国のガールズグループ「BLACKPINK」のメンバーであるLISA(リサ)が、2024年ごろからお気に入りのキャラクターとしてSNSで紹介したこととされており、彼女はラブブ風のオリジナル衣装でコンサートのステージに立ったこともある。


BLACKPINKのLISAにより、ラブブのブームが始まった(画像:VOUGUE TAIWAN公式インスタグラムより)

 その後、中国や韓国のインフルエンサーやモデル、海外セレブたちがハイブランドのバッグにラブブをぶら下げた投稿を発信するようになり、ラブブ自体にもステータスシンボルとしての価値が付加された。

 そして、それは単なるファッション小物ではなく、ブランドの完璧な世界観に“ノイズ”を混ぜる行為として機能した。

 「あえてのミスマッチ」――つまり、意図的に整合性を崩すことへの感性がトレンドをけん引した。小難しく言えば、ハイブランドの象徴である「完璧」「洗練」「格式」の中に、どこか歪(いびつ)で素朴な人形を添える。そのギャップが既存のラグジュアリー概念をゆるやかに解体し、ハイエンド層の遊び心や自己表現の自由を象徴するスタイルとして受け入れられていったといえるだろう。

 このような背景から、セレブやインフルエンサーに憧れを持つ若者を中心に、SNSを通じてラブブ人気が過熱していったのだ。

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