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「ラブブ」トレンドは長くは続かない? ジレンマを抱える人気キャラが「失った価値」廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(2/6 ページ)

一気に人気キャラの仲間入りを果たしたラブブだったが、そのトレンドはもしかしたら長くは続かないかもしれない……。なぜか?

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ラブブ、カルチャーアイコンから“投資対象”へ

 ハイエンド層の支持を得たことは、ラブブを単なるカルチャーアイコンから“投資対象”へと変化させる契機にもなった。

 本来は数千円で購入できるブラインドボックスのぬいぐるみが、転売市場では数万円から数十万円で取引されるようになったのである。例えば、シューズメーカーVansとの限定コラボモデル「Labubu × Vans Old Skool Vinyl Plush Doll」のケースを見てみよう。

 ラブブはVansの代表的なストリートスタイルである、Sk8-Midスニーカーやスウェットシャツなどを身にまとっている。青とオレンジのキャップには、シリーズ名である「The Monsters」のロゴがあしらわれているのが特徴だ。2023年にデザインされたアイテムで、新作ではないものの、現在では流通数が少なく、入手が難しい人気モデルの一つとなっている。


限定コラボモデル「Labubu × Vans Old Skool Vinyl Plush Doll」(画像:FIG PALACE公式Webサイトより)

 このVansとのコラボモデルが、オンラインオークションのeBayに出品されたところ、96件の入札を集めた末に1万6000豪ドル(約157万円)で落札となった(10月20日時点のレート、以下同)。他にも2万8300ドル(約426万円)で落札された「Three Wise Labubu」や、3万1250ドル(約470万円)で落札された「Sacai x Seventeen x Labubu」など、ある意味ラブブは資産価値を有しているといえる(参照:Forbes「This Labubu Just Sold For $10,585: Here’s Why They Might Be Good Investments」)。

 それゆえに、限定版やコラボモデルには抽選が殺到し、「当たること」自体が一種のステータスとなったり、人気転売商品の対象となったりした。それはポケモンカードをはじめとしたカードゲーム界隈と同様であり、SNSにおける「ラブブ当選報告」や「開封動画」はコレクション文化と投機文化の間に揺れる新しい消費形態を映し出した。

 それはもはや「かわいいキャラクターを愛でる」行為や、「流行に乗るための」行為ではなく、「希少なキャラクターを所有する」ひいては「それを転売し資産を得る」行為へと変質していったのである。

 この背景には、POP MARTによる数量限定・ランダム性を戦略的に設計したマーケティングがある。この“希少性の演出”がハイブランド的な文脈と結び付くことで、ラブブは「小さなぬいぐるみ」でありながら、感性と経済が交差するオブジェとして機能し始めた。転売価格が高騰するほど、所有者の承認欲求が刺激され、ラブブは「かわいさ」と「価値」を同時に担う存在へと昇華していったのだ。

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