「背中を見て覚えろ」の終焉 日本の製造業は生き残るために「現場のプライド」をAIに渡せるか(2/2 ページ)
製造業のDXは次の局面に移りつつある。少子化やサプライチェーンの複雑化が進む中、問われているのは部分最適ではなく、AIを前提としたサプライチェーン全体への最適化だ。日本企業に求められる対応を整理する。
ロボットは“命令待ち”から自律判断へ
そして2026年、米NVIDIAのジェンスン・フアン氏が「フィジカルAI元年」と提唱したように、AIとロボットを組み合わせたフィジカルAIへの注目が高まっている。
これまでの産業用ロボットは、あらかじめ学習したパターン通りに動く機械学習の域を出なかった。しかし、AIの進化により、現場の状況を認識して自ら判断する、より高度な自律型ロボットへの進化が現実味を帯びてきている。
4月にドイツで開催される産業技術見本市「ハノーバーメッセ2026」ではキートピックとして「Industrial AI」が掲げられている。
「これは、AIが未来のスマートワークのキーテクノロジーだという明確な発信であり、AIによって生産プロセスが最適化され、サステナブルな経営が実現するというメッセージです」(福本CEO)
日本の製造業が選ぶべき進化とは
これらの技術革新の本質は、単なる現場高度化ではない。AIエージェントやフィジカルAIが真価を発揮するのは、企業や拠点を越えてデータが連携し、サプライチェーン全体が一つの“知的システム”として機能したときだ。部分最適の積み重ねではなく、全体最適をどう実現するか――そこにDXの本丸がある。
この激動の中で、日本の製造業はどう立ち振る舞うべきか。福本CEOは、日本が進むべき方向として、いくつかの“戦略的進化”を挙げる。
まず重要なのは、熟練技能者が持つ「暗黙知」をデジタルに継承することだ。日本の強みは、長年蓄積してきた高品質な現場データにある。それらを構造化し、フィジカルAIに学習させることができれば、日本独自の競争力へと昇華できる。若手育成の高速化にもつながるだろう。
同時に求められるのが、「スキル型組織」への転換だ。AIに委ねられるルーティン業務はAIに任せ、人は「関係性を設計する力」や「創造的な判断」といった領域に集中する。AI活用を前提とした組織設計へと舵を切れるかどうかが、企業の分水嶺になる。
さらに欠かせないのが、データの透明性(トランスペアレンシー)の確立である。膨大なサプライチェーンデータをAIが自動で収集・検証・更新する仕組みを整え、経営判断をデータドリブンへと転換することが求められている。
「日本の中にある現場の誇りや文化をAIに継承させ、人と技術が共に進化していく。それこそが、日本の製造業が維持発展していくために重要な役割を果たすはずだ」と福本CEOは語る。
個別最適の積み上げから、サプライチェーン全体が最適化する時代へ。AIを前提に経営を再設計できるかどうかが、日本の製造業の競争力を左右する。
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【概要】AI時代に求められる「情報を共有し、信頼を築くコミュニケーション力」について紹介します。旭鉄工ではSlackとAI製造部長を活用し、現場の情報やノウハウを生成AIで共有・活用。暗黙知の形式知化を進め、AIと人が対話しながら思考を磨く仕組みにより、全員が自律的に学び、成果を生み出す組織へと進化しています。
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