なぜあなたのAIは「当たり障りない」回答しかしないのか? Claudeを使って“頼れる相棒”に変える方法(2/2 ページ)
人に仕事を依頼するとき、相手の状況や前提を伝えなければ、的外れな提案が返ってくることは珍しくない。生成AIも同じだ。冨田到氏は、「AIエージェントを本当に役立てるには、ユーザー固有の背景情報、すなわちコンテキストを与えることが不可欠だ」と指摘する。コンテキストの有無で、AIの提案はどこまで変わるのか。
コンテキストで、より実践的な提案に
次に、会社情報というコンテキストを与えた上で、同じ質問をしてみましょう。以下の情報(社名などは筆者が架空で設定)を入力してみます。
今度は、Claudeがあなたの会社のコンテキストを踏まえて以下のようなマーケティング戦略を提案してきました。
回答が長いので要約させたものを以下に示します。
今度はどうでしょうか、Claudeは「既存の健康志向を生かした商品コンセプト」「若年層が求めるカスタマイズ体験の提供」「SNS映えする視覚的インパクトの演出」「予算制約(400万円)内での実現可能な投資計画」など、令和フードチェーンという架空の会社の具体的な状況と課題に沿った、より実践的で現実的な提案をしてくれました。
この2つの回答を比較すると、以下の違いが明確になります。
コンテキストがない回答では、生成AIは学習データ全体の傾向から「平均的な戦略」を提案します。一方で、コンテキストを与えると、特定の業界や顧客の状況に合わせた、より具体的で現実的な提案に変わります。一般論ではなく、会社の規模やリソースに合わせた実行可能な戦略が提示されるのです。
AIは、背景情報をこう考えている
では、なぜコンテキストを入れると、ここまで出力が変わるのでしょうか。あくまでかみ砕いたイメージですが、生成AI(ここではテキストの生成を行う言語モデル)は、文章を作る時「次に続く言葉の可能性リスト」を頭の中に思い浮かべます。
例えば「今日の天気は」という入力に対して「晴れ」「曇り」「雨」などいくつかの候補が浮かび、それぞれに「出やすさの度合い」(目安の数字)がついています。これは数値例で言えば「晴れ 30%、曇り 40%、雨 30%」といったイメージです。AIはその中から確率的に次の言葉を選んでいきます。
コンテキストがない時は、この「全体的に平均っぽいリスト」から言葉を拾うため、答えも平均的になります。
ところが「今は梅雨です」という情報を加えると「梅雨」という言葉に強く注意が集まり、それに関連する「雨」が出やすくなります。ここでいう「注意」(Attention)とは、人間が文章を読む時に大事な部分に自然と目が行くのと同じです。AIも入力文の中で「今の質問に特に関係の深い部分」を重点的に見て、答えを出す可能性を調整しているのです。
本記事の例なら、AIは次のような情報に注意します。
- 「健康志向の和食中心」→セルフサービス野菜バーという健康的なソリューションを提案
- 「若年層の取り込み不足」→カスタマイズ体験とSNS映えで若者のニーズに対応
- 「予算500万円以内」→投資額400万円で実現可能な設備投資計画を提示
こうして「どこに注意するか」が変わることで、膨大にある候補の中から、より文脈に合った答えが出やすくなるのです。
コンテキストがなければ「一般的な外食チェーン戦略」という回答にとどまりますが、条件を与えれば「あなたの状況に特化した戦略」にシフトします。
営業職なら、初回訪問のお客さまと、3年取引のあるお客さまとでは、提案内容が全く変わることをご理解いただけるでしょう。AIも同じで、相手の背景を知ることで、より関連性のある提案ができるようになります。
このように、コンテキストはAIにとって「答えの出やすさを調整するスイッチ」のように働きます。同じAI、同じ質問でも、背景情報があるかどうかで出力の質は大きく変わるのです。
場合によっては、個人情報やデータの取り扱いには配慮が必要ですが、一度ルールを明確にしてコンテキストを渡せるようになると、一段上のAI活用の道が開けるでしょう。
著者プロフィール:冨田到(とみた・いたる)
早稲田大学社会科学部卒業。スリーエムジャパン株式会社にて営業、株式会社ゼロワンブースターにて新規事業開発支援を担当。スタートアップ数社経験後、2024年にデスクリサーチに特化した生成AIエージェントを提供する株式会社Deskrexを創業。AIアプリケーションの提供・受託開発や、生成AIを活用した調査代行や研修を提供し、企業の知的生産の業務時間の圧縮とスキルアップを支援している。
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